納豆、テキーラ、Ｒ＆Ｂ

Q-TIP

『Kamaal The Abstract』　(’０９)

　“みんな大好き”Ｑティップさんの新作、と言ってもリリースされたのが今年の９月ってだけの話で、レコーディングされたのは２００１年頃、本来ならソロ２ｎｄになるハズだった作品。今日までさんざん音源が流出されてたようですが、遂に正式な形で“公開”ッ！

　この『Kamaal The Abstract』のタイトルなんですが、カマールはイスラムに改宗後のＱティップの名前で、“The Abstract”とは、何かと抽象的なＱティップの別名(本人も好んで使うアダ名)みたいなモノ。９０年代半ば以降のATCQっぽいHIPHOPは“Abstract-HIPHOP”って呼ばれてた時期もありました。

　去年の１１月に出た『Renaissannce』の感想で、’９９年の１ｓｔ『Amplified』からの９年という時間の隔たりはもとより、内容的な空白があり、１つか２つ位抜け落ちてる感じがすると書いてました。そのスキマを埋めて納得するには、お蔵入りになってる作品群を聞くほかない、と。

　そんでもって実際に聞いてみると・・・、タイトルどおり抽象的ッ！ブットビすぎ！なかなか難解だぞぉ、こりゃ・・・。

　Ｑティップによるラップ＆例の独特な声によるヘタウマヴォーカルとバンドミュージシャンによるインプロヴィゼーション、相乗効果で過熱していきます！
　Ｑティップがさんざんインスパイアされたであろう、ウェルドン・アーヴィンやロイ・エアーズ、スカイハイ・プロダクション、７０年代のマイルス・デイヴィスがやってたジャズみたいです。　

　本来の“具体的な”手法からHIPHIOPを表現するのではなく、かけ離れた手法でアプローチしたいという欲求の現われなのでしょうか、とんでもなく自由でオープンな音楽になってます。HIPHOPという括りからも少し外れて、「俺サマの提示する“グッド・ミュージック”とはこんな感じだけど、どおよ？」てな具合で。　

　けど２００１年にコレはブットビすぎだろう！？今現在の、多様化が進んだ音楽に幾分慣れた耳で聞いてもコレは十分にヘンテコリンだぞ！？
　２００１年当時、「ヒットは見込めない」と一度はお蔵入りになったけど、ようやくリリースされるにあたり、Qさんは「(２００３年の)アンドレ３０００の『The Love Below』が大ヒットして、同じ方向性だった『Kamaal The Abstract』は間違ってなかった」と語ったそうです。今ようやく時代が追いついたってコトですかね？

　そしてやはり考えるのは、聞いててオモロイ“攻めの音楽”を作るＱティップやアンドレ３０００に多大な影響を与えたプリンスはどれだけスゲエのか、そしてさらにプリンスより前の、ジミヘンやスライ、マイルス・デイヴィスはもっとスゴイってコトですよ。
　過去の遺産を食いつぶすのではなく、継承し、新たなものを作り出す、それも恐れず先陣をきって出て行く、そんな“クリエイター”がいるからこそ、次のレベルへ全体が導かれていくのでしょう。世間からはすぐに理解を示されなくても。

　Ｑティップもそんなミュージシャンの一人であると再確認させられた一枚でした。願わくばコモンとの共作、ホントに出す気があるのなら早く聞いてみたいモンです。

Q-Tip Official

↑実はココでアルバム全編聞くことができます。けど国内盤には、Ｑティップとも親交のあるMUROによる「スライの“Dance To The Music”ノリ」で作ったという、“Barely In Love ～Back To 1970 Remix”のボーナストラックが入ってます。

Kamaal The Abstract Myspace

↑ここでは、アンドレ３０００をフィーチャーした、変態Ｆｕｎｋ“That's Sexy”が聞けます。