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『NEW AMERYKAH Part.2 ~Return Of The Ankh~』 (’10) Erykah Badu
前作『Part.1』が出たのが2008年の春で、当初この『Part.2』も2008年内に続けて出るって話だったけど、結局2010年の春になりました。新作聞けるならいくらでも待ちますけど。 エリカ・バドゥ本人が、「1st(『BADUIZM』)の雰囲気に戻ってる」といった発言をしていて、90年代後半にデビューした“ニュー・クラシック・ソウル”の括りで語られたアーティスト達は、一様にその呼ばれ方やそれに分類されることを多少嫌がってる人が多くて、だからこそ、エリカ・バドゥも“トコトンHIPHOP”な方向突き進んでったんだと思ってました。 だから、「原点回帰」的指向にこの新作がなるのなら、最近の“モロHIPHOPなエリカ節”が大好きだった分、「どーなんのかなぁ・・・」って思ってました。 エリカ・バドゥの言いたかったことは、「1stアルバムの頃のユッタリした」感触ってコトだけだったのでしょう。そもそも、物議に発展した1stシングル“Window Seat”のミュージック・ビデオ(故郷・ダラスの街中で全裸になるっちゅうアレ)も完全なゲリラ撮影で行われたってコトだから、その時点でブッチギリな「HIPHOP」ぶりを発揮してたワケです。 前作『Part.1』はトコトン攻撃的な内容だったけど、今作『Part.2』はそれと対をなす、全く逆の方向性で作ったそうで、前の「肝っ玉カアちゃん」的な逞しいラジカルなHIPHOPから一転し、今度はどこかナマメかし~い感じがする「艶姫」イメージなユルい感じの色っぽいスローなHIPHOP。両方とも大好きなノリです。 イロイロ考えて見ると、もし『Part.1』と『Part.2』が2枚組で出てたらとんでもない完璧なバケモンアルバムになってたんじゃないのかな~と思いました。当初そんな計画もあったらしいですが・・・。 参加ミュージシャンも、“音楽を未来に繋ぐ意思と覚悟を本気で持っている”お馴染みの面子。 今熱い血を持った音楽があるのか?めっきり珍しくなりましたよ。
日本盤の解説が、エリカ・バドゥのこれまでの経歴だけで終わってて、曲の解説とかが全くのってなかったので、ワシなりの感想を書きます。
1.“20 feet tall” アルバム全体の穏やかな雰囲気を予感させる序曲に相応しい、「アナタが心に20フィートの壁を作っても大丈夫、ワタシャ20フィートの女だもの」って歌詞がステキな一曲目のプロデュースは9th Wonder。前作収録の“Honey”はワシの一生ソングになりました。
2.“Window Seat” 1stシングル。お馴染みジェームズ・ポイザーとの一曲。確かにこの曲は1stアルバムの頃の音色に近いモノがあるかも。
3.“Agitation” David Sancious『Just As I Thought』(’79)をモロ使い。前作に引き続き、Sa-RaのShafiq Husaynによるプロデュース。
4.“Turn Me Away (Get Money)” ロイ・エアーズのプロデュースによる、シルヴィア・ストリプリンの“You Can't Turn Me Away”をそのまんま使い、というよりほとんどカバー(悪意のない替え歌)に近いような・・・。
5.“Gone Baby, Don't Be Long” ポール・マッカートニー&ウィングスの“Arrow through Me”のサンプリング許可をとりつける際、twitterを通して「誰かポール・マッカートニー側の連絡先を教えて」と言い、やっとこさアルバム収録にこぎつけたらしい一曲。コレもイイ曲だぁ・・・。
6.“Umm Hmm” ここへ来て、『Part.1』ではトコトン奇ッ怪なビートを提供していた奇才マッドリブが、アルバムの中で最もステキなOKBT(オシャレ・キラキラ・ビートな・トラック)を披露!!こりゃ意外ッ!
7.“Love” ここでよーやくJay Dillaの置き土産が炸裂ッ!!!!
8.“You Lovin Me” スキット的な短い一曲。なんか歌詞ではトンデモないコト言ってますが・・・。
9.“Fall In Love” カリーム・リギンスによるプロデュース。テンプテーションズにいたエディ・ケンドリックスの“Intimate Friends”をペースちょいと早めでネタ使い。コレもイイッ!
10.“Incense” これもマッドリブによるプロデュース。マッドリブらしからぬ(?)流麗な仕上がり。参加プロデューサー陣でもっとも前作との音色の「落差」が激しかったのはマッドリブで、そーゆー意味では「『Part.1』とは全く逆の内容にする」というコンセプトを一番理解していたのかもしれないですね。
11.“Out My Mind , Just In Time” ストーンズ・スローの才女、ジョージア・アン・マードローによるプロデュース(キーボード、ベース、ドラムも担当)。ジャジーな感じの一曲。
12.“Telephone”(Remix) 日本盤のみ収録。『Part.1』に入ってた曲の、テクノっぽい(?)リミックス。正直、このボーナストラックはそんなにウレシくなかった・・・。
サンプリングネタの詳細も書きましたが、それほど今作が、サンプリングというHIPHOP的手法による「元ネタの持つダイナミズムまでもしっかり伝えて活かしきる」という、優れたHIPHOPのみに見受けられる好例に溢れていると感じたからです。“原曲殺し”とも言える、悪例もたくさんあるワケだし(誰とは言わんけど)・・・。
☆エリカ姐さんのオドロキ万華鏡☆
↑ビラルと、現在オツトメ中のリル・ウェインをフィーチャーした、超エキセントリックな未来型ソウル! 『Part.2』に未収録って知った時、「ナゼ!?」って思ったけど、アルバム聴いてからはそれにも納得できました。この曲は明らかに『Part.1』の方に入るべき曲ですね。
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