先生は青い空
毎週1回、ジヘさんに1時間、韓国語を習っている。その代り私が彼女に1時間、日本語を教える。ある晴れた日、いつものように駅でジヘさんを車に乗せた。それから、ポピーが真っ盛りだろうと花の国に直行。駐車場に車を止めると、青空教室の始まり。2人でポピーの中を歩く。「写真を撮るからポーズ取って」と言う私に、なぜか左の横顔ばかり見せる彼女。そっちの方が美しく写るから、その方がいいんだそうだ・・・。2人の会話は日本語。彼女の日本語の方が何倍も上手だから、会話は上手な方に主導権を取られる常。ポピーひろばを離れて、急な階段の道を山の上の芝生広場まで登る。横浜の日本語学校で地震に会い、家に帰れなくて避難所で1人心細く夜を過ごした恐怖から、横浜の学校に戻らない決意をした彼女、毎日、自宅近くのジムに通い始めた。15分の階段登りだってへっちゃら。ベンチに座って、おやつの柏餅を食べてから、私たちはおもむろに教科書を開く。最初は私が生徒だ。韓国語の時間の読み方は難しい。何時何分という時の「何時」はハングル固有の数え方、言わば「ひ、ふ、み、よ・・・・・」だ。しかし分の数え方は日本語の「いち、に、さん」のように数える。突然ジヘさんが言った。「今日は韓国語は何時何分から何時何分まで勉強しますか」とっさに数えられない私。自分の1番得意な数を言った。おかげで私の韓国語のその日の割り当ては15分間になった。花のひろばから離れているから、あまり人が来ないところだが、時々ベンチの横を通りがかる人たちが怪訝そうに私たちを見ている。青空の下での勉強は気持ちがいい。そしてまた思いは福島の子供たちに飛ぶ。早く思いっきり外で遊べるといいね。