500円の遺言
100円ショップに行くと500円玉を入れる貯金箱(缶)を売っているのを知っているだろうか。10万円と書かれたその缶にぴったり500円玉を入れると全部で10万円貯まるのである。有る時思いついた。よーしこの缶に10万貯めて貯まったら夫と旅行に行こう。収入のない主婦の考えそうな事だ。人間だんだん欲が出てくるのが常である。最初は国内旅行が目的だったはずが、テレビの旅番組を見ていると・写真集の世界遺産の街に魅せられてしまうと・ブログ友達の旅の記事を読むと、そこに行きたくなる。ボロブドゥール、チベット、モロッコ、マチュピチュ、ドイツアルプス・・・。果てしなく夢が広がる。そしてついに500円貯金缶は果てしなく数が多くなるのだった。まあでも、まだ私が買い求めたのは数個だけど・・。500円玉がぎっしり詰まっているのはそれ以下だけど・・。それぞれの缶の外には紙が貼られ、目的地の地名が書かれる。チベット、バラトン湖、ボロブドゥール、ベネチア。10万円で2人で海外旅行が出来るはずもないが、その時の小遣いにはなる。夢は果てしなく広がる。しかし、私たちももう良い歳である。もしも、もしかしてどちらかがそのお金を使わないうちに逝ってしまったら・・・・。残った方がそのお金を持って目的地に旅をするので有る。遺言。旅の終着に付いた時言うのだ「ほらついにここ約束の地に来たよ」と。「そうしようね」と言ったら、夫が言った。「他の人と来てもどうせわからないよね」まあ、それも良いでしょう。そこに行くことが遺言なのだから、それさえ果たせば、と広い心で思ってはみたものの、癪だから、歳を取ったら息も絶え絶えになるような高地を書いておこうか。ネパールとかボリビアとかレイラダックとか。いや待て、何も私が先に逝くとは限らない。後に残ったのが私なら。ブータンのタクツアン僧院3,000mに登った時ですら高山病のように頭が痛くなったんだった。危ない危ない。とりあえず、今はまだボロブドゥールとバラトン湖とルアンパパンの半分しか行かれないことになっている。お茶を飲みながら1人ほくそ笑む。朝もやの中のルアンパパンの托鉢への喜捨を想像して。追伸この話は我がブログ友のあなただけの内緒にしておいてくださいね。泥棒が入るといけませんから。まあ、しかしあれを盗んで逃げるにはちと重すぎますがね。