読後感想文「少女」
例えば、編み物を始める時毛糸玉をいくつか準備する。それぞれに巻いてある紙を、いちいちとるのが面倒だからと、先に取ってしまって始めるとする。編んでいるうちにその2つがどうしたはずみか絡まり合ってしまった。絡まりあった毛糸を少しずつ少しずつ解していくとそれに連れてだんだん糸口が明瞭になっていく。湊かなえの小説はそんな話だった。例えば、神経衰弱をしていて初めは全然合わないカードばかりだったのが、数が少なくなるにつれ、覚えたカードが多くなるにつれ、ペアーになるカードを引き当て易くなっていく。「少女」はそんな小説だった。銀行に用事が有って出かけた。たった10分の電車の乗車時間ではあるが、積読では先に進まないので隣の奥さんに借りた本を持って出かけた。電車の中で読もうと思って。銀行に着くまでの10分でそれぞれの章が2人の少女によって交互に語られていくこと、その中の登場人物がそのうち微妙に絡み合って繋がっていくだろうことを読み解いた。小説の技法としては良くある話。映画でも良くある手だ。そして最後には登場人物すべてがどこかで繋がるはず。面白くなってきたから銀行の後、タリーズに入ってコーヒーを飲みながら読み進める。なるほどなるほど、やっぱりこの人とこの人も繋がった。2杯目のコーヒー。3分の2読み進んだところでほとんどすべての糸玉が頭の中で明瞭にほどけた。この分では最後まで読む前にこんがらかった糸はすべて解けるはずだ。家に帰っても残りを読み続ける。3杯目の、今度は紅茶。ほらやっぱりにらんだ通り、そうなった。でも、本の序章のもっと前にある文章は2人のうちのどちら?謎を残したまま、ラストに突入。最後の最後の章で最初と繋いであった。あ、少女は3人いた。2つの糸玉は玉こぶで結ばれていて、ほどけないようになっていた。トランプの神経衰弱にはジョーカーが1枚交じっていたのだった。ネタバレしちゃいましたが気になる人は小説を読んでください。