シーキャッスル
その日、病院にお見舞いに行こうとご隠居と家を出た。
病院の後夕食をと久し振りのドイツ料理を予約した。
そうだ、娘のコンサート用の黒のロングスカート依頼されていたのだった。途中生地屋さんに寄った。
さて、江ノ電に乗ってはみたものの生地屋さんで時間を使いすぎた。レストランの予約時間が迫っていた。これから病院のある駅に行って、病院まで歩いて玄関から病棟の部屋までぐるぐる回って着いても顔を見た瞬間帰るようになる。
まずい。
何がまずいかというとレストランの予約時間に遅れるとオーナーのカーラさんに怒られるかもしれないのだ。グルナビのコメント欄に以前そんなコメントが載っていた。
結局お見舞いは後日に回して、病院のある駅で引き返した。
カーラさんとは店以外でも何度も会っているし、お互いクリスティンの友人同士だ。コメント欄のように怒られる事はないがやっぱり彼女の店のルールを尊重したい。
もう60年以上同じところでドイツ料理店を営んでいる。メニューも変わらず、お店も古いから決してお客が多いわけではない。
それでも常連さんはカーラさんの遠慮のないもの言いを逆に親しみと感じ訪れるのだろう。
鎌倉長谷、ドイツ料理店「シーキャッスル」。
初心者にはちょっと勇気のいる店である。洒落た現代的な高級感を楽しむ人には勧めない。リーズナブルな料理を期待する人にも勧めない。
ドイツが好きで、ドイツを懐かしむ人には居心地がいい店なのである。
孤独のグルメというテレビ番組でロケに来たんだよと、その夜の我らが独り占めのカーラさんとの会話。
やっぱり、料理と雰囲気を尊重すると写真を撮る勇気が萎える。スープの写真だけ。とほほ