鹿島茂 『渋沢栄一』 を読む
ドラッカーが「偉大なる人物」と絶賛したという渋沢栄一とはどんな人なのかと本を探していたら、1月末に「算盤編」と「論語編」が出ていたので購入。 2,100円×2冊=4,200円 多種多様な500を超える企業の設立にかかわった経緯を知りたかった。現在まで残る大きな会社を創りえたその才能は、どこでどうなってできたものなのかを。幕末と言えば坂本龍馬や新撰組や高杉晋作や吉田松陰などが有名だが、同じ時代に生きていた渋沢もまた、倒幕を企てていたとは意外だった。高崎城を乗っ取って兵備を整え、横浜の外国人居留地を襲って焼き討ちにし、外国人と見たら片っ端から切り殺してしまおうという物騒な計画を立てていたのである。ところがいつのまにか尊攘過激派が一橋家の家来になってしまい、パリ万博へ。そして徳川幕府の瓦解によって帰国。違う角度から幕末を読むというのは面白いものだ。まだ1冊目の三分の二ほどしか読んでいないが、渋沢栄一の人生は自分の意志よりも、他からの強制によって動かされているような気がしてならない。銀行、保険、鉄道、海運、土木、水道、電気、燃料などインフラに関わる企業。紡績、鉄鋼、製鉄、セメント、化学薬品、造船、ビール、食品、など製品を生み出す企業。商社、通信、新聞、印刷、ホテル、不動産、デパート、広告などサービス企業。渋沢栄一がいなければ、日本経済はもっともっと遅れていたのではないのか。今話題の「日本赤十字社」の設立にも関わっている。すべては「民」の発展のために、日本の礎を築いた日本資本主義の父と呼ばれる最善の人。仏文学者の手によって丹念に調べ上げられた本である。2冊で900ページ以上。読み応えがある。若者に知ってほしい人である。