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「悼む人」
天童 荒太 文藝春秋 忘れ去られた被害者、その人を確かに記憶したい、愛したこと、愛されたこと、感謝されたこと その人は、確かにこの世に生をいききった。だからこそ、この心にしっかりと記憶する。 静人の過去の人生がそうさせたとはいえ、彼の心からの被害者を心に留めるという、その崇高な気持ちが、 時として、人に受け入れなくても、自己のみにとらえて離さない被害者への思い、 人は、彼を悼む人と呼ぶ、多くの人は、精神的に病んでいると思う、あるいは何かの宗教団体かと思う。 彼が悼む事で、嫌悪感を示す人もいる。それでも、彼の悼む行為は、やがて理解する人も現れる。 彼の不可思議な行為を、すべて理解した母、ガンに侵されても死をむかえる間際まで、病院の厄介にならずに、 自宅でその強い意志で、自己を失うことなく、人生をまっとうしていこうとする。それを支える家族の暖かさ、優しさ 「悼む人」静人を中心に、かかわっていく人々のそれぞれの葛藤、 マスコミで事件、事故は日々伝えられるが、加害者の罪を通して、加害者自身は、私たちも多少なりとも覚えているが、 被害者のことと言えば、まったく知らせられないし、だから記憶にもとどめない。加害者の過去の経路は知らされても、 被害者の生前の人々との係わり合いには、めもくれない。 被害者が誰に愛され、誰を愛し、誰に感謝されたか、知るよしもない。 一方、家族や、多くの人々に惜しまれながら、死んでゆく人たちもいる。 平等にこの世に生を受けたのに、死は平等にあたえられない。 だからこそ、静人のように、死そのものに区別なく、受け入れ、記憶に留めてくれる人がいれば、安らかな死そのものを受け入れる 事ができる。 この本は、私に、忘れ去られる死そのものを、死だけに孤立せずに、その死を通して、生前の生を、その人が生ききった人生そのものを 考えさせられることをあらためて思い起こさせる事を、知らされた。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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