『 人質カノン 』 宮部みゆき
「動くな」。終電帰りに寄ったコンビニで遭遇したピストル強盗は、尻ポケットから赤ちゃんの玩具、ガラガラを落として去った。事件の背後に都会人の孤独な人間模様を浮かび上がらせた表題作、タクシーの女性ドライバーが遠大な殺人計画を語る「十年計画」など、街の片隅、日常に潜むよりすぐりのミステリー七篇を収録。 人質カノン十年計画過去のない手帳八月の雪 過ぎたこと生者の特権漏れる心人質カノンはミステリーとしては普通に読めるものなのですが、コンビニという場所の存在の意義について考えさせられました。そこにいた人々の風景、偶然に居合わせた必然、コンビニってこういうところなんですね。便利なだけではないんだなぁ。八月の雪は『蒲生低事件』を思い起こさせるものでした。いじめグループから逃げる途中に交通事故にあい片足を失ってしまい、世の中の不公平さを呪い気力を失いひきこもってしまった少年が主人公。そんな事件の後、祖父が急死し、遺品から遺書めいた書付が出てくる。それを調べ始めた少年は祖父の意外な過去に触れることとなります。。。この短編ではいじめを取り上げたものが三篇あります。このころのいじめと今のいじめはちょっと変化が見られる気がします。これだけでも時代・・・の変化を感じます。本を読み返すとそのときには気づかなかったこと、今だからわかることがある。とたくさん聞かされていましたが、まさに実感です。何度読んでもいいそんな宮部みゆきでした。