2010年の新聞棋戦県大会の一局から。白は私、黒は強豪Kさん。囲碁歴を通して、間違いなく公式戦で一番数多く負けている相手。大局観が優れている上に読み合いにも強い恐ろしい相手だが、無理するタイプでないので乱戦になる事が少ない。この碁は珍しく激戦になった。
実戦図1
上辺の競り合いから乱戦に突入した。
実戦図2
白1から右上を取って良しと思ったが、黒4が凄い頑張りでびっくりしたと思う。さらに16も凄い。お互いの気合がぶつかり、一歩も譲れない競り合いになった。黒20はシボリを見た手筋、白21を打たないと、シチョウで取られてしまう。
実戦図3
上辺黒を取って、中央も威張って白かなり優勢と思っていたが、今検討するとあまり差がないようだ。右上は元々白の勢力圏なのと、上辺~左上の黒地が増えている。
実戦図4
黒はさらに、中央の石も逃げ出して頑張り右辺の石が薄くなった。黒1に白2は、1の2路下の味を気にしたのと、これで十分と見た手だが甘かった。当然、白3と攻めを継続すべきだった。下辺割り込んで、シチョウが良いので下辺を荒らして逃げ切りと思った瞬間、黒の切り返しが来た。
実戦図5
以下黒7までが黒の注文で、一気に難しい碁になった。白6が悪手で、ここで7の所に打つのが柔軟な手だった。最後は左下の戦いで、時間がない中お互いにミスが出たが、白が幸運の勝利を得た。
それにしても、昔の碁を検討すると反省する事が多い。何でこんな手打ったんだろうと今から見ると不思議に思うことが多いが、それが実力なのだろう。
ところでKさんの名言中の名言がある。Kさんのある対局後の検討でのこと、負けた某若手選手が「ここはこう打ては良かった。」と悔やんだのに対しKさん「それならなんでそこに打たなかったの?」。若手への厳しい言葉だが、深い言葉が心に響いた。後からなら分かるもの。
この名言、最近のコロナ評論を見て思い出した。