オランジーナは、何となくやさしい味。
私は現在、主に船橋市の倉庫で働いている。そこの休憩室の自動販売機にはオランジーナが置いてある。「フランス生まれの国民的オレンジジュース」という評価を引っ提げて日本に上陸したオランジーナ。私も何度か飲んでみたが、何となくやさしい味だ。それが今、年間売上目標が大幅に上方修正されるほどの大ヒットらしい。 炭酸飲料「オランジーナ」異例の快進撃 大ヒットの裏で緻密な戦略(7月31日、フジサンケイビジネスアイ) サントリー食品インターナショナルが販売するフランス生まれの炭酸飲料「オランジーナ」が、清涼飲料の新商品としては異例の快進撃を続けている。当初予定していた年間200万ケースの目標をわずか1カ月で達成し、3カ月後には倍の400万ケースを突破、販売計画は当初の4倍となる800万ケースに積み上がった。1000種類の新商品が生まれても1年後に残るのはわずか数種類といわれるほど競争が厳しい国内飲料市場。オランジーナのヒットの裏には、部門の壁を越えて社員が一丸となり、練りに練った強力なマーケティング戦略があった。 2010年9月。当時入社2年目だった久米さやかさんが、オランジーナプロジェクトに参加した。「メーカーに就職したからには、一度は新商品の企画・開発に関わりたい」と志願した。任された仕事が、1936年にフランスで生まれ、欧州を中心に世界約60カ国で販売されている人気商品「オランジーナ」の日本上陸を成功させることだった。 サントリーホールディングスは09年11月、オランジーナを販売していた仏大手飲料メーカー「オランジーナ」を買収した。オランジーナ社は、欧州を中心に、炭酸飲料「シュウェップス」などのブランドで知られ、清涼飲料市場(水を除く)で米コカ・コーラに次ぐ2位。サントリーの海外事業強化を象徴する買収として、当時業界で話題を集めた。オランジーナの日本での商品展開は、その当時から検討していた。日本だけでなく、アジア市場も視野に入る。日本市場での売れ行きは、その後の海外市場の成否を占うだけに、久米さんら食品事業部のチームが背負った重圧は大きかった。久米さんは「苦労は数え切れないほどあった」と振り返る。 まず、直面した課題は「オランジーナのブランドイメージを崩さずに日本でヒットさせるにはどうすればいいのか」ということだ。日仏の市場の違いを双方の担当者に理解してもらうことが欠かせない。わかりやすく説明し、粘り強く理解を得る努力を心がけた。具体的な問題として浮上したのは、飲料の容器をどうするかだった。フランスでは、カフェなどで飲まれるガラスのビンが象徴的なのに対し、日本は店頭販売を念頭に置いていたためペットボトルと缶の使用が想定されていた。そこで考え出されたのが、「ビンをモチーフに丸みを帯びた独自のペットボトル」の開発だ。 さらに、「表面にでこぼこをつけること」でビンに近い感触を持たせた。フランス発の国民的飲料がやってきたという印象を強く打ち出すためにラベルに国旗をプリントするといった工夫も凝らしたという。サントリーが得意とするCM戦略も見事に的中した。このテレビコマーシャルは、フランスの国民的飲料のイメージを生かすために、日本の国民的映画である「男はつらいよ」をモチーフにして制作した。寅さんの格好をしたフランス人「TORA」を、ハリウッド俳優のリチャード・ギアさんが演じる。「国民的」や「フランス」というキーワードで、オランジーナを印象づける戦略だ。 オランジーナは「炭酸飲料をあまり飲まない層にも浸透している」と久米さんはいう。オレンジやレモン、マンダリンオレンジの混合果汁の味わいや、オレンジピールを使用したほどよい苦みと炭酸を抑えた微炭酸が「大人の炭酸飲料」として20~40代の男女を中心に好評だからだ。小売店だけでなく、フランスと同様に飲食店での取り扱いも増加している。久米さんの上司で同事業部課長の高木祐美さんは、オランジーナの成功の理由について、「久米さんのオランジーナへの強い思い入れが、他部門にも伝わり、社員が一丸となったため」と話す。情熱を持った若い女子社員を、先輩社員たちがサポートする、というチームワークが開花した形だ。 同社には、1981年の販売以来のロングセラー商品「サントリーウーロン茶」や販売開始9年目となる緑茶「伊右衛門」など多くの有名ブランドがある。今後の課題は、ヒットを一過性にせず、オランジーナを主力ブランドに育て上げることだ。しかし、炭酸飲料は日常的に飲まれる水やお茶、缶コーヒーなどに比べて、消費者の購買行動は新商品に移りやすく、ヒットを持続させるのはより難しい。日本の飲料業界は、消費者の健康志向が強いミネラルウオーターやお茶の販売が伸びる一方、炭酸飲料などの嗜好(しこう)品は有名ブランドとして確立されている商品が強い傾向があるという。価格競争や過度な販売促進キャンペーンなどに頼らず、ブランドとして確立することはそう簡単ではない。 高木さんらは「オランジーナしかできないことが何なのか。ぶれずに徹底的に考えたい」とブランド育成に意欲を見せる。「やってみなはれ」のチャレンジ精神を旗印に成長してきたサントリーグループ。海外ブランドのオランジーナを日本で成功させた開発チームの新たな挑戦も、「やってみなはれ」の力強い言葉に後押しされている。 (引用終わり) 日本とフランスとの販売戦略や人々の習慣の違いが、ビンに見立てたペットボトルという形となって現れたということだろう。ちなみにオランジーナと聞くと、パリのイメージはなく、地中海に面したマルセイユ、ニースのイメージが出てくるのは日本(瀬戸内海に面した愛媛、太平洋に面した和歌山)と共通しているかもしれない。