参議院・岡山で選挙無効判決!
昨年の衆議院総選挙を巡っては、高裁レベル(広島高裁)で違憲・無効判決が2件も出たことに驚かされた。結果的には、今月20日に最高裁では違憲状態という判決が下された。最高裁が慎重な姿勢を示したのか、それとも広島高裁の判決が異常だったのかはよく分からない。 その広島高裁の岡山支部が、今年7月の参院選の岡山県選挙区での一票の格差を巡る訴訟において、選挙結果を違憲・無効と判断したのだ。衆議院では例があるものの、参議院選挙では史上初の異常事態だ。 広島高裁岡山支部の判決要旨は以下の通り(ソースは毎日新聞)。 国政選挙における投票価値の平等は、国民主権・代表民主制の原理及び法の下の平等の原則から導かれる憲法の要請である。国会は投票価値の平等を実現するように十分に配慮しなければならない。 2010年選挙後、議員定数を4増4減する改正がされたが、それでも本件選挙の最大格差は4.77倍であり不平等さは顕著だ。 09年大法廷判決は、07年選挙の最大格差はなお大きな不平等が存する状態で、国会が速やかに適切な検討をすることが望ましいと判示した。国会は遅くとも大法廷判決が言い渡された09年9月30日から、選挙制度の抜本的改革を内容とする立法的措置を講じる責務があった。 しかし、本件選挙までの約3年9カ月間、議員定数を4増4減する改正にとどまり、抜本的見直しに真摯(しんし)に取り組んだというには疑問が残る。16年選挙に向け、抜本的な見直しをした法案が成立する見通しは不透明だ。 不平等状態の是正は他の懸案問題に優先して取り組むべきものであり、東日本大震災の対応や景気回復等の課題が山積していることを考慮しても、不平等状態を是正する案を国会に上程すらできなかったことの合理的理由があるとはいえない。国会の裁量権の限界を超え、本件定数配分規定は憲法に違反するに至っていた。岡山県選挙区の選挙も無効とすべきである。 無効判決が確定した選挙区における選挙の効力についてのみ、判決確定後将来にわたって失効するものと解されることなどを考慮すれば、長期にわたって投票価値の平等という憲法上の要請に著しく反する状態を容認することの弊害に比べ、本件選挙を無効と判断することの弊害が大きいとはいえない。 本件選挙を違憲としながら、選挙の効力については有効と扱う「事情判決の法理」を適用することは相当ではない。 (引用終わり) 広島高裁岡山支部は、2007年参院選の一票の格差を巡る裁判が2009年9月に終わってから3年以上もの間、抜本的な選挙制度改革を行わなかった立法府の対応を厳しく批判した。そして、仮に今年の参院選の47選挙区の結果が無効と判断されて選挙区選出議員が全員失職したとしても、比例区選出議員と非改選組の議員だけで参議院の本会議などの運営は可能という趣旨の認識を発表した。 しかし読売新聞は社説で、選挙無効判決を下した岡山支部の解釈を批判した。無効判決について「再選挙のルールも明確でないのに選挙のやり直しを命じるのは、無責任ではないか」と記した。 確かに、一票の格差が憲法違反であることを理由に選挙無効と確定した判決は今のところ無い。しかも、再選挙だとしても一票の格差を是正してから再選挙という流れになるだろう。ところが、現段階では例えば「衆議院では一票の格差は1.5倍以内が理想」という具体的な判断は一切出ていない。そうなると司法府の立法府に対する強い警告と捉えることはできても、司法が立法に介入するという一種の政治介入になるだろう。最悪の場合、強すぎる司法によって三権分立が崩壊する恐れが十分にある。このことから、国会議員の自主的な議論に任せるしかないのだが、政党主体の選挙制度改革は信用できないのが本音だ。 参議院を廃止も含めて見直す有識者会議を設置して国会に勧告する形で大改革をするしかないかもしれない。ただし、参議院廃止となると憲法改正が必要になってくるが。いずれにしても、今のままの参議院ではいつか絶対に破綻するのではないか。