カテゴリ:科学
先日,OECDの15歳を対象にした国際学力調査の結果が発表されました。
57カ国中,読解力が15位,数学的応用力10位,科学的応用力6位で,数学的応用力と科学的応用力が3年前の調査と比べて下落したとのこと。 科学的応用力の問題を見ました。 二酸化炭素排出量のグラフと地球の平均気温のグラフが並べられていて,そのグラフから地球温暖化の原因が二酸化炭素である根拠を論ずるというものです。 グラフの比較,検討という問題は慣れていないとなかなかできるものではありません。グラフを見て考えるという作業を小中学校の授業ではされていないのが現状ではないかと考えます。 確かに,今のような詰め込み型では考えられないと思います。日本は昔から考える力が弱いと言われてきましたが,考える力をつける練習をしなければできるようになるわけありません。ましてや,授業時間を減らして詰め込む量まで減らしたわけですから,さらに落ちるのも当然なのでしょう。 でも,これは僕が教えている高校課程,すなわち大学受験の問題でも言えることです。化学は暗記というのは昔々のことで,近年の入試問題は考える力が必要です。とはいえ,理論分野では計算が主体なので,考えるというよりはどれだけ解法を知っていて,計算力があるかを問われているようなものです。また有機の構造決定問題も,細かい条件をパズルのように組み合わせていくので,真の考える力とは違うと思います。 正解が一つではなく,考え方が色々ある問題をつくるというのは非常に大変ですし,採点も時間がかかります。また選抜に使う上で優劣の評価がしづらいのも事実です。中学入試などは積極的に取り入れている学校もありますが,それで学校が臨む生徒が来てくれるかどうかは難しいところです。 でもこういった力がないと将来,困ると思います。データ解析ができないのに作った建物は地震に強いだろうか?経済の予測はできるのだろうか?などなど,いま日本が抱えている問題が解決できないのは考える力がないからだと思ってしまいます。 15歳は一番ゆとり教育の影響を受けていると言われています。でもそれは大人が「今の若いもんは~」といっているだけで,大人ができていないにも関わらず,全てを子どものせいにしているようにしか聞こえません。 新聞やニュースを見ていても,書いてある言葉はすべて悲観的なことばかりで,改善しようという考えがないのです。それは大人の責任です。テレビでお笑い芸人がグラフの読み方をおもしろおかしく考えさせる番組ができたら変わるかもしれません。実際,最近深夜に科学番組が増えています。それを見ていると,CGを上手に使ってわかりやすく説明してくれ「へえ~」と思う事が多いです。それをもっとゴールデンタイムでやってくれたらと思います。でも,視聴率とれないからできないのでしょうが。 僕がいま,考える力をつけてあげらているのかというと,できていないでしょう。あくまで大学入試に合格できる力をつけているだけですから。もちろん,問題を考える力など暗記によらないようにしています。でも,所詮は紙の上での出来事で実際に実験などしないと力になりません。 じゃあ,実験をすれば良いのかというとそうでもないから難しいのです。実験だけさせても生徒はその作業だけで,考えることをしないからです。豊富な知識を備えた上で実験をすることで考えられるのです。 以前,学校で金属イオンの分析実験を行いました。よく入試問題にも出るものです。最初は実験してから授業をしていました。でもそれでは,ただ沈殿が生じた,色が変わったで終わってしまっていました。そこで授業で沈殿する理由などを説明して覚えさえてから実験をしたところ,考えて実験するようになり,生じた物質の検討や失敗した理由などを議論していました。 理科=実験というのが目立ってきていましたが,ただするだけではダメなのです。どちらもしようとするととても時間がかかります。だからこそ,ゆとりじゃだめでしっかりとした時間を確保し,適正なカリキュラムが必要なのです。 僕が今できることとはかなり離れていますが,これからの教育を変えていくためにも考えていく必要があると思います。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Dec 7, 2007 10:21:52 AM
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