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ラッブ・フォー・ラブ その3 廣龍
看病で気ぜわしいのであれば、句会なんぞに行く余裕が在るとは思えない。静代は落ち着きを無くしそうになる自分を感じた。華菜と一緒に食べようと思い朝早く起きて料理した筑前煮等の惣菜を冷蔵庫に入れながら、 ――折角持ってきたのに、病院にはコンロもレンジも無いだろうし、ご飯だって炊けやしないし……。あっそうだ、華菜に電話して、何が食べたいか聞いてみよ。途中で買っていけば良いんだわ。 華菜の声が携帯から流れ出て静代が話そうとした途端、いきなり電源を切られた。何と失礼なと静代は気分を害してしまった。暫くして電話が来た。「さっきは部長先生の診察の最中だったのよ、御免ね」と謝ってきた。 ――大名行列の最中だったんじゃしょうがない。機嫌を直してやるか……。 「華菜、今日は病院だってね。華菜が家にいると聞いていたんで、伯母ちゃん、家に来ちゃったのよ。……気にしないで。行き違いってあるものよ。看病を交代したんだって? ……そんな、気にしない。誰だって忘れる事もあるわよ。伯母ちゃん、そっちに行くけど、お昼、何が食べたい? 伯母ちゃん、華菜と一緒に食べようと思って筑前煮作ってきたんだけど、病院じゃレンジがないし、冷たくなった物は美味しくないしさ……。食べたいって言ったって、冷たいんじゃね。途中で何か買っていくわ。食べたいってったって……、なに? 保冷バッグに入れて行くの……? それじゃ、余計に冷たくなるでしょう。なに? 暖めて……、タッパに詰めて……、保冷バッグに入れてくるの? 蓄冷剤は入れないの。……そうか! ポット見たいになっちゃうんだ。……判った。じゃ、ご飯も炊いて持ってくよ。ちょっと遅くなるけどまっててね」 ――どのみち、あの調子じゃ、ご飯なんて炊いていないだろうし……、おみそ汁も作ってっと……。その間に居間と廊下くらいは掃除していくか。こりゃ忙しくなったわ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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