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連載小説 ラッブ・フォー・ラブ その4 廣龍
静代は居間のカーテンを思いっきり引き開けた。カーテンは下の方が大きく弧を描きながら開いたが、上はカーテンレールに挟まりガキッと音がして止まった。手を離されたカーテンは又、弧を描きながら戻ってきた。僅かに開いたカーテンの隙間からの光が条となり、射し込んだ。カーテンの裾で舞い上げられた埃が条光の中で煌めきながら踊っている。静代の顔が曇った。 ――まさか、ここまでとはね……。 サイドボードの上盤を人差し指でなぞってみる。指に埃が張り付いてくる。指でなぞった跡が綺麗な筋になっている。 ――掃除してあげるのは良いんだけど、後で色々言われるのは間尺に合わないわ。しかし、こんな状態では子供達に良い影響があるわけないし……、淑恵にも困ったもんだわ。 掃除機をかけ終わって、炊飯器をみるとまだ炊飯のランプは消えていない。 ――なんだかこの炊飯器は時間が掛かるわね。拭き掃除までやれっちゅうの? 本当に世話がやけるわね。 ブツブツと淑恵の悪態をつきながらも身体は自然に動いて、淑恵がさぼっている家事をかたづけていった。 ――華菜と慎也はどう思っているのかしら、母親の事を。私がお灸をすえてやんなきゃならないのかしら。いまの淑恵の耳には届かないかな……。それどころか、「華菜が欲しいから良い伯母さんぶって……」なんて逆捩喰らわされたんじゃ間尺に合わないし……、と言ってほっとくわけにもいかないし……、本当に苛々しちゃうわ。 結局、家を出るのは一時を回ってしまった。 「華菜? 伯母ちゃんね、今から出るけど二時過ぎちゃうかも知れない。お腹、大丈夫? 伯母ちゃんも少しお腹空いたけど頑張って病院まで行くわ……。そうね、お腹を空かした方が美味しいよね、……って言うけど、お腹が空いていなけりゃ私の作ったものは不味いって事? ……冗談よ! じゃ、今から行くからね」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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