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連載小説 ラッブ・フォー・ラブ その7 廣龍
「誰も見ていないわよ。窓のカーテンは閉めているし」 「華菜、その椅子を片して……、バスケットの中のビニールシートを敷いてよ」 「伯母ちゃんそんなものまで持ってきたの。全く、用意周到と言うか、大袈裟だというか……。わぁ、大荷物」 「愚図々々言ってないで、早くバスケットから出しなさい、お腹空いてんだから……。ビニールシート敷いたらお尻が汚れないでしょう。床だって汚れないし。食べ零しだって大丈夫よ」 静代は「あーぁ、疲れた」と言いながらビニールシートにペタンと座った。 「ちょっと伯母ちゃん、何人分持ってきたのよ。五人分はありそうよ」 「なにを大袈裟なことを言ってるのよ。せいぜい三人分くらいでしょう」 「伯母ちゃんって大飯喰らいなんだ」 「どうでも良いけど、ちょっとしたもんでしょ、この辛子明太子なんか博多地方限定版の本格物よ。製造元は有名な料亭よ」 「わぁ美味しそう、この筑前煮……」 「美味しそうでしょう。博多出身の小島さんから教えて貰ったんだから。あっ、そうそう。小島さんの前で筑前煮って言ったら駄目よ。怒って持って帰っちゃうから。がめ煮って言うのよ」 「何それ?」 「博多ではがめ煮って言うらしいから……。 伯母ちゃんちに来たら秘伝を伝授してあげるわよ」 華菜は横目で見上げるように、 「その話できたんでしょ、今日は」 「あぁ、それそれ。伯父ちゃんも気を揉んでてさ。『早く跡継ぎを決めないと西川の家が途切れっちゃう』ってさ。養子のくせに家付き女房の私より心配しているの。可笑しいでしょう。父に良くして貰ったから恩義感じてるんでしょうけど……。『血の継がった華菜ちゃんが一番良いって』さ」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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