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連載小説 ラッブ・フォー・ラブ その13 廣龍
次の日曜日に華菜が家にいることを確認して、静代は出かけていった。静代が家に着いたときに、華菜は起きたばかりでパジャマ姿で居間のソファーに転がっていた。 「何よ、若い娘がパジャマ姿で顔も洗わないで……」 「若くもないけどさぁ。昨日はね、例のジュリーさんが来て、遅くまで話し込んでなかなか帰らないの。それで寝不足になって、朝、ママと交代して家に帰ってきて寝ていたのよ。今さっき眼が醒めたけど身体がだるいようで、何もする気がしなくてさ……」 「じゃあ、お昼ご飯はまだだねぇ……」 華菜は大きな欠伸をして、 「お昼どころか朝ご飯も済んでいないのよ。ジュリーさんが持ってきたケーキを食べながら夜更かししたので、食欲もないけどさぁ」 「若い娘がそれじゃあお肌に悪いわ。顔を洗って散歩でもしてきなさい。ご飯つくっといてあげるから」 華菜の欠伸は治まらないようである。上目使いで何かを窺うように、 「ところで伯母ちゃん、今日は何の用?」 静代は後を向いたまま、 「先週来たときにあまり埃が溜まってたのでね、ふたりに代わってお掃除でもしてやんなくっちゃと思ってさぁ……」 「ふーん、有り難いことです。……ところでさぁ、又でたのよ、蛾が」 「又出たの? 同じ奴?」 「同じ蛾よ、きっと……。あんな大きな蛾はそんなにいるもんじゃ無いわ。私と、ジュリーさんがケーキを食べている時にこの前と同じ所に張り付いているの。吃驚したんだけど、ジュリーさんが週刊誌を持って立ち上がったから、もっと吃驚したの。きっと叩き落とすつもりだと思って止めさせたけど……。今度も私が看護師さんを呼びに言っている時にいなくなったのよ。ところが、今度は窓を閉めていたので、どこから出ていったか不思議なのよね……。ジュリーさんがちょっとよそ見をした時に消えていたんだって。ちょっとした怪談話よ。ジュリーさんも『頭がボーッとしてきた』と言ってたわ。蛾の超能力?」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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