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テーマ:お勧めの本(7395)
カテゴリ:本
十年前に別れた人と偶然に再会した亜紀は、元夫勝明の十年経ったとはいえ、あまりの様子の違いに驚き、長い手紙を書く。
勝明と亜紀は結婚生活も上手く行っていたのだが、勝明の中学時代の同級生との不倫がもとで思いもよらぬ事件となり別れてしまう。 ただ、別れる時に亜紀は不倫相手の事も事件の事も勝明に詳しく聞く事はなく、勝明もふれもせずにお互いの気持ちをとことん言い合わなかったことで、亜紀は久しぶりに会った夫に一方的に何か言いたくなった。返事はもらわなくても良いと思って書いた手紙に返事がきて。 勝明は十年間でどん底を見、亜紀も乗り気でもなかった結婚をし、決して幸福な生活を営んでいるわけではない。 そして、別れてからはあまり良いことはなかった二人が、手紙を通してお互いに心配し、いたわりあっている。 別れさえしなかったら、いえ、勝明が不倫さえしなかったら、幸福かどうかはわからないにしても、現在とは全く違う状況にあっただろう。 しかし、1年近く手紙のやりとりをするうちに、事件の真相を知り少しずつわだかまりも取れていくと、それぞれの生活にも少しではあるが前向きに歩んでいける兆しが出てくる。 こんなに長い手紙を書いたり読んだりするのはちょっと…と思って読むと興醒めしてしまうが、物語としては事件もあっておもしろいし、再会した後のお互いを思いやる部分が切なくてたまらない。 これは、私が宮本輝作品を読み続けるきっかけになった小説だから、やっぱり思い出深い。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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