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カテゴリ:日本映画
≪姉の死は妹を成長させた。ふたりで乗り越えられた問題もこれからはひとりで乗り越えるんだよ≫
大林宣彦監督の新尾道三部作の最初の作品で、邦画の中ではかなり好きな部類に入ります。公開から数年たって妹が「絶対好きなはずだから」とレンタルして家に持って来ました。さすが我が妹よ、私の好みはちゃんとわかっていて、彼女が薦める映画や本は私にとってはほとんど外れがないのです。 先日久しぶりに観ました。 ドジでのろまなミカは両親と、優等生でしっかり者の自分とは正反対の姉チズコと尾道に暮らしていた。チズコが17歳、ミカが14歳のある日登校途中チズコが不慮の事故に遭い死んでしまう。そのショックでチズコに頼りっぱなしだった母は精神的になかなか立ち直れないでいた。ミカは姉の代わりを務めようと何とか明るく振舞っていたが、ある時変質者に襲われそうになったのをチズコの幽霊が助けてくれる。その日以来ミカが困ることがあるとチズコが出てきてふたりでその難関を突破する。 尾道の町を舞台に大林ワールドが展開されます。 「ドジでのろまな」カメじゃないけど、石田ひかりがこの表現がぴったりなミカを巧く演じています。部屋は足の踏み場もないほど汚く、髪の毛はなんだか乱れて歩き方もしゃべり方もダラ~っとした感じです。 一方姉のチズコはきちっとしたいかにもしっかりとしたお姉さん的感じがします。チズコは生前ももちろん、亡くなってからもこのドジでのろまな妹のことが心配でしょうがなかったのですね。だから事ある毎に出てきてくれた。妹を想う姉の気持ちにがよくわかります。妹に依頼心の強い母親を助けてあげなさい、とアドバイスしたりする事でミカにしっかりして欲しかったのです。 姉の想いと、妹の姉に対する想い。少しは違いがあるものの、姉のアドバイスを聞いて段々しっかりとしていくミカ。容貌も少しずつ美しくなっていきます。年齢もチズコが亡くなった時の年齢に近づいていくミカに対して、死んだ時のまま時が止まってしまったチズコ。ミカが大きな問題をクリアした時、チズコはここにはもう自分は必要ない、と思い又遠くの世界へと行ってしまう。 こういう設定は弱いです。私の死後の世界観になんとなく似ているからです。死んでからある期間は霊となっても現れることも出来るような世界にいるけど、その後はもっと遠くのもう現れることの出来ない世界に行ってしまう、そんな事がありそうな気がするからです。霊でもいいから出てきて欲しいと思うような近い存在だった人がもう絶対に手の届かないような場所にいってしまう。(死んだら即そうなるのはわかってるんですが) でもミカのそばにはいつもチズコがいるんですけどね。死んだ人を忘れることがなければみんなそうなのですけどね。 CGとかがいかにも大林監督、って感じでちょっと古っぽい所もありますが、尾道の坂道の途中にある家々、学校から見渡せる瀬戸内海の風景とかがとっても好きです。尾道って行ったことないんですが、大林作品を観ると行ってみたくなります。 大林作品にはお約束的な尾美としのりがBF役ですが、ちょっとどうなんでしょう?それとミカの親友役の老舗旅館の娘マコがいつも着物姿なのが変だけど面白いです。 テーマ曲の「草の想い」がすごくいいです。さすが久石譲。哀しくて切なくて『天空の城ラピュタ』の「君をのせて」くらい好き。 1991年 監督:大林宣彦 原作:赤川次郎 脚本:桂千穂 出演:石田ひかり、中嶋朋子、尾美としのり、岸部一徳、富司純子 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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