|
テーマ:おすすめ映画(4068)
カテゴリ:イギリス映画
≪復讐は復讐を呼ぶ。復讐を絶やす術はないものか…やるせなくなります≫
北アイルランド、特にベルファストは昔からIRAのテロ活動でよく目に、耳にする所です。 今日の映画はそのベルファストを舞台にIRAの事や、そこに住む人々、アイルランド、北アイルランドについても考えさせられる作品で、以前初めて観て以来ずうっと心に残っている作品でもあります。 IRAの活動に参加した事で14年間服役していたダニーが出所して故郷の町に帰ってきた。元恋人のマギーはIRA幹部のジョーの娘で、ダニーの親友と結婚し息子と共に服役中の夫を待つ身。 ダニーは元コーチとボクシングジム開き地元の若者たちをジムに受け入れながら、自分も再びボクサーとしてリングに立つ。ダニーとマギーの仲は再燃するかに見えたが、過激派のハリー達の監視によりまたもや2人は引き裂かれそうになる。 抑圧された社会というのは、日本で暮らしている私たちには想像するのは難しい事だと思います。この映画では、そういう社会の悲惨さ、醜さ、IRAの活動や目的を判り易く描いているのではないでしょうか。 今は少し落ち着いているのか、ただ私達のところにそのニュースがあまり届かないのか、最近はIRAによるテロ事件はあまり聞きませんが以前はよく耳にしていました。この映画を観る前はあまりIRAについて知らなくてプロテスタントとカトリックの紛争、だと思っていたくらいです。発端はそこだったのでしょうが、その後イギリスからの独立運動が絡んだりして複雑な問題を抱えた組織となったようです。 IRAという組織を常に意識しなくてはならない土地柄、それに宗教も絡み、ここに住んでいる人たちは生まれた時から誰かを恨み、社会を恨みながら生きてきたのかもしれません。 主人公のダニーは自分の運命を受け入れ、ボクシングを通してそういった社会に立ち向かうかのようにパンチし続けます。ダニーのアイルランドに対する愛情を、寡黙でストイックな彼からより深く感じられます。 打たれても打たれても我慢し続ける彼に、絶望の中にも決して諦めないアイリッシュの頑固さも見た気になるのです。ダニエル・デイ・ルイスの抑えた中にも激しい思いを秘めた演技が私の心を打ちます。そしてそのダニーが獄中でも愛し続けたマギー。彼女を演じるエミリー・ワトソンも又迫真の演技で、そこでの日常の危険や組織のボスの娘としての葛藤が伝わってきました。 この作品には、無意味な争いをどうにかして無くしたいという思いが込められていて、そのテーマを軸にボクシングや恋愛も描かれています。重いテーマではありますが、その事により切実に私たちの胸にも響くのではないでしょうか。 ダニーの「人殺しは嫌いだけど、この街は人を殺したい気分にさせる」という台詞と、マギーがジョーから街を出て行くように忠告された時に「逃げないわ。逃げるのは罪を犯した人だけ」と言う台詞が心に残っています。 THE BOXER 1997年 イギリス 監督:ジム・シェリダン 脚本:ジム・シェリダン、テリー・ジョージ 出演:ダニエル・デイ・ルイス、エミリー・ワトソン、ブライアン・コックス、ケン・スコット お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[イギリス映画] カテゴリの最新記事
|
|