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テーマ:おすすめ映画(4070)
カテゴリ:イラン映画
≪無償の愛は少年の生き方をも変えてしまった≫ イラン映画は何年も前から話題になっていましたが、実は私は今回初めて観ました。 テロップに、「ソ連軍の侵攻、タリバンの圧制を逃れてイラン国内には150万人のアフガニスタン難民がいる」と始まります。 建築現場の親方メマールは違法だと知りながらも、アフガニスタン難民に同情的で彼らを雇っている。そこで働くラティフは買出しやお茶くみをしているが、一言多く喧嘩っ早いトラブルメーカー。 ある日、怪我をして仕事にこれないアフガン人労働者ナジャフの代わりに彼の息子だというラーマトと言う少年がやってくる。力仕事が苦手な彼は親方からラティフの仕事に交代するように言われる。ラーマトの仕事ぶりを皆に褒められるのを面白くないラティフは彼に八つ当たりをする。しかしある日、ラティフはラーマトが少女であることに気づく。それからの彼は態度が急変し、事ある毎にラーマトをかばうが… 殺伐とした工事現場での劣悪な環境の中、トラブルを起こしながらも自分の役割にある種誇りを持ちながら仕事をしているラティフ。そこへ突如仕事を代われと言われ、おまけに代わった相手の仕事ぶりはすこぶる評判が良い。面白くないのもわかるけど、その時のラティフは嫉妬心丸出しの幼稚なガキンチョです。 ところがラーマトが女の子(本名はバラン)だと分かるやいなや態度が180度変わるのには笑ってしまいます。こんなに急変するのはどうかと思うのですが、恋愛にも厳しいルールのあるお国柄、きっと男ばかりの仕事場で少女が髪をとくシルエットを見ただけでも恋してしまうのかもしれません。これは私たちには理解しにくい事柄かもしれないけど、あり得るのでは、と思います。 戦争の為に国を逃れ、逃れ入った場所でも自由には生きられないアフガニスタン難民と言う立場。テレビのニュースで見ることはあっても、こういう風に生きている、というのは知り得ませんでした。 後半のラティフは彼女の為に生き方を変えます。一度も口を利くことは無く、彼女が急流の川で石を拾って働く様子をただ見つめるだけしか出来ない彼は、お金で少しでも彼女を助けたいと思います。 苦しい生活は自分も同じだけど、それでも彼女を助けたい一心でお金を工面するラティフに胸が打たれます。 そして、家族の為に幼いながらも一生懸命に辛い仕事をするバラン(ラーマト)にも、実際こうなんだろうと思い、つくづく自分たちの悩みなんてこの人たちとは比べものにならない位ちっぽけなものなんだと思い知らされます。昔は日本もこうだったんですけどね。 テヘランは高地なんですよね。雪が降る冬の景色や白樺の続く未舗装の並木道に、昔の邦画の風景を見ているような気持ちになりました。 バランを見送るラストシーン。とうとう一言も言葉を交わすことはなかったけれど、ぬかるみに足を取られ落とした靴を彼女に差し出すラティフとバランは、ナイトとお姫様のようでした。 もう二度と逢うことはないだろう二人の若者。話さない状況にヤキモキしながら、でも最後のラティフの僅かな微笑で、切ないけれど清々しい気持ちになれた佳作でした。 こんな映画、もう日本人には作れないかな… 2001年 イラン 監督/脚本:マジッド・マシディ 出演:ホセイン・アベディニ、ザーラ・バーラミ、モハマド・アミル・ナジ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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