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カテゴリ:アイルランド映画
≪この家族の再生はある出会いがきっかけだったのかもしれません≫
私は監督で映画を観るという事はない、と前に書いた事がありますが、それでも知らず知らずのうちに好きな監督の作品は多く観ているものです。そんな監督たちの中の1人がジム・シェリダンなのですが、この映画はシェリダン監督がアメリカに渡って来た時の事が色濃く反映している、半自伝的作品だそうです。 夢を求めてアイルランドからニューヨークに渡って来た売れない俳優ジョニーは妻のサラ、二人の娘クリスティ、アリエルと共にスラム街のボロボロのアパートに住むことになった。ジョニーはオーディションに落ち続け、サラは近くのアイスクリーム屋さんで働いているが、25セントのお金も払えないほど貧しい生活を送っている。そんな中でも幼い姉妹にとってニューヨークは楽しい街だ。しかし、ジョニーとサラは息子の死を忘れられずに苦しんでいた。 ハロウィーンの日、同じアパートの住人でアーティストのマテオと知り合った事からこの家族に変化が… 子供にとっては劣悪な環境。ジョニーは生活の為に仕事をするというよりも、夢を求めて来たアメリカで役者になる道を諦めずにいます。それでも娘達をカトリックの学校に入れるのが(おそらく私立でしょう)、何だか腑に落ちません。そんなにお金がないのなら公立に入れればいいじゃない。おまけにサラは妊娠します。この上子供が増えて生活できるのか?見ている方は気が気じゃありません。 でもその辺はあまり細かく描かれてはいません。むしろ、子供達がそんな環境の中生き生きと楽しそうに生活している様子が描かれています。そして、生活苦というよりも、未だ癒えない息子を亡くした悲しみ、苦しみにもがいている夫婦がいます。その夫婦のありようは時々娘達に対して、家族と言うものに対して無責任に感じたりもします。そこに現れたマテオの存在。ネタバレなるので多くは語れませんが、彼がこの家族に与えたものは出会いと、そこから生まれた奇跡だったのかもしれません。 ETをモチーフにしたラストには思わず涙が出そうになりました。 クリスティとアリエル役の二人が自然で、かわいらしくてとてもいいです。苗字が同じなので、実際にも姉妹なのかもしれません。 ラストの方で、クリスティが父親に「弟が死んでからママは泣いたけど、私も1人の時は泣いた。妹をなぐさめ私が家族を支えてきた」というようなセリフがあります。わずか10歳やそこらの子供が言うセリフだろうかと思うのですが、嘆き悲しむ親(実際には子供の目の前ではそうはしていないつもりの親達)を見て、自分はこの家族を支えなければならない、と思ったのかもしれません。幼いから何もわからない、というのは間違いで、子供は意外にその辺のところを敏感に感じ取っているものなのでしょう。特に一番上の子供というのはそのように思います。 クリスティが学校の学芸会か何かで"DESPERADO"を独唱するシーンがありますが、声もきれいでとても上手いです。ここでは「ならず者」と訳さずに、「絶望した者よ」と訳されていますが、ジョニーとサラに歌いかけているようでより感動も増したのでした。 クリスティは弟から願い事を三つ叶える力をもらったと信じていて、二つの願い事はアメリカに来て早い段階で使ってしまいます。三つ目の願い事をいつするのかと思っていたら、彼女は実に賢くその三つ目の願い事をしました。それによって、みんなが悲しみから癒され救われるのです。 悲しみや、苦しみというものも味わいながら、最後は勇気ももらえるような暖かい作品でした。 エンドロールで流れる音楽も、宇宙とか海を漂っているような雰囲気でとても好きです。 脚本は監督の実の娘さんたちとの共同執筆だそうです。 IN AMERICA 2002年 アイルランド/イギリス 監督:ジム・シェリダン 脚本:ジム・シェリダン、ナオミ・シェリダン、カーステン・シェリダン 出演:サマンサ・モートン、パディー・コンシダイン、サラ・ボルジャー、エマ・ボルジャー、ジャイモン・ハンスウ DVD お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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