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カテゴリ:イギリス映画
≪まるで絵画のように美しく、プラトニックで官能的≫
日本では「青いターバンの少女」と言うタイトルで有名な絵画。17世紀のオランダの画家フェルメールの作品。フェルメールの絵は好きで、特にこの「青いターバンの少女」はどこか悲しげで、でもどこか幸せそうな不思議なとても惹き込まれる物を持っている絵だと思っていました。 フェルメールは謎の多い画家で、この絵のモデルなどは何もわかっていないとか。そこでトレイシー・シュヴァリアと言う作家が、この絵に秘められた謎を想像して書いた小説を映画化したのがこの作品です。 貧しいタイル職人の娘グリートは、使用人としてフェルメールの邸で働く事になった。この家にはフェルメールと妻、6人の子供達、妻の母親が住んでいて、いつも忙しくそして騒がしい。おまけに生活は苦しいのに、妻は7人目を妊娠していると言う。 ある日、グリートがアトリエの窓拭きをしたことで陽の光を変化させ、フェルメールが新作を描くきっかけとなった。彼はグリートの色彩感覚を見抜き、絵の具の調合を手伝わせそのうちモデルも頼むようになるが、その事は家の者の嫉妬をうむことにもなった。 フェルメールの邸は運河の側で、そこから間もないところには市場もあり、家の中でも6人の子供達の声が始終こだまし、騒音はかなりもの。しかし、フェルメールのアトリエは実に静寂です。実際は防音装置があるわけでもないのでそんなはずはないのですが、彼の絵から感じ取れる静けさを、この映画ではアトリエの中にそれを求めていました。 どこを切り取ってもそのまま絵画として存在してしまうような美しい映像。でも特にアトリエ内のシーンには、本当にフェルメールの絵かと錯覚してしまうほど、光と影が上手く重なり合って見入ってしまいました。 ストーリーはフェルメールとグリートの、主人と使用人と言う立場をわきまえながらも、お互いに惹かれあっていく様子をもどかしくとても官能的に描いています。プラトニックだけど、いつもターバンで巻かれ隠されている髪の毛を見せること、耳に穴を開けること、こう言ったシーンにドキドキさせられてしまいました。そして二人の対照的な手。触れそうで触れないその手は、仕事で荒れてしまったグリートの手と美しい芸術家のフェルメールの手。細部にこの人たちの立場や、二人の関係が上手く表現されています。 又昔は絵を描くのも絵の具の調合からするわけですから、今の何倍も時間がかかり大変な作業だった事もわかります。 嫉妬する妻、好色なパトロン、計算高い義母、意地悪な子供、いろんなタイプの人間に囲まれて、畏れながらも主人であるフェルメールに惹かれていく。それは尊敬の念が含まれた憧れだったかもしれません。又フェルメールもグリートに惹かれていく。これも彼女の才能を認め、二人は情欲でなく芸術によって信頼を築き、愛情を感じていたのかもしれません。 一枚の絵からこんな物語が出来る。何だか楽しいです。 スカーレット・ヨハンソンは、セリフは少ないけど内面のさまざまな葛藤を表現して、若いのに実力のある女優さんですね。彼女の透き通るような白い肌に、美しい青いターバンと光り輝く真珠の耳飾りがとても映えていました。 GIRL WITH A PEARL EARRING 2003年 イギリス/ルクセンブルグ 監督:ピーター・ウェーバー 原作:トレイシー・シュヴァリア 脚本:オリビア・ヘトリード 撮影監督:エドゥ・アルド・セラ 美術:ベン・ヴァン・オズ 衣装:ディーン・ヴァン・ストラアレン 出演:スカーレット・ヨハンソン、コリン・ファース、トム・ウィルキンソン、キリアン・マーフィ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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