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テーマ:映画レビュー(894)
カテゴリ:ロシア映画
≪父は最後に"ワーニャ”と叫び、息子は最後に"パパ”と叫んだ≫
ロシアの映画ってものすごく久しぶりに観ました。これが心にズシーンと来る作品でして。 万人が好む作品では決してないと思うのでおすすめにはしませんでしたが、心に残る作品です。 アンドレイとイワンの兄弟は母と祖母との4人暮らし。ある日突然12年ぶりに父親が帰ってきた。兄弟は写真でしか父親を知らなかったが、父も母もこれまでの事は何も語らなかった。父親と言う存在を改めて感じる二人に、父は湖へ旅行へ連れ出す。 いきなり現れる父親。だけどその父は旅行中息子達に対してとても高圧的に振舞います。笑顔も見せず、今までの事を語らず、息子達にも何も聞こうとしない。そんな中でも父親を慕う兄に対して、弟はどんどん反抗的になっていきます。父はイワンに親しみを込めた呼び名の”ワーニャ”とは決して呼びませんし、イワンも自分から"パパ”とは呼べずにいます。 父は父で息子達にいろんな事を教えているのではないかと思うのです。いろんな場面での対応の仕方、キャンプでのテントの張り方、何でも人を頼らずに自分でやるように旅の中で自然とそういう場面をこなさせていっているようにも思えます。それは父親の愛情の表現なのかと。ただその表現はあまりにも粗野で、ああいうやり方では、自分達には興味がないのではないか、愛情なんてないのではないかとイワンが思うのも当然なのです。息子達にもっと言葉をかけてあげればよいのに、という不満は私の中にも起きていました。 時間を守れ、言い訳をするな、そういう当たり前の事だけど、子供からすれば一方的に怒るのではなく理由も聞いて欲しい、と思うのですが、父親は威厳を保ちたく又きちんと子供を躾けたいという思いもあるのでしょう。一方最後の最後まで頑固で意地を張り通したイワン。 島や大雨、掘り起こされる箱、緊張感のあるサスペンス的な進み具合に、退屈なロードムービーかと思っていたら、どんどん目が離せなくなってしまいます。 実は最後は父と子の和解のストーリーと思っていたので、予想外の結末にショックを受けてしまいました。 一体父親は12年間何をしていたのか、何故突然帰って来たのか、島で掘り起こした箱は何か。多くの謎は解明されないまま映画は終わってしまいます。そのあたりの未消化な部分はあるものの、重いけれど心に残る映画でした。 灰色の空、土砂降りの雨のシーンがあるかと思えば、突き抜けるような青空にすぐにも手が届きそうなところにある雲、透きとおった湖、ロシアの殺伐とした中にも美しい自然が余計に悲しみを誘います。 エンドロールに映し出される旅行のスナップが印象的。 VOZVRASHCHENIYA / THE RETURN 2003年 ロシア 監督:アンドレイ・ズビャギンツェフ 脚本:ウラジミール・モイセエンコ、アレクサンドル・ノヴォトツキー 出演:コンスタンチン・ラブロネンコ、ウラジミール・ガーリン、イワン・ドブロヌラヴォフ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2005.10.15 19:22:58
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