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テーマ:映画レビュー(894)
カテゴリ:イタリア映画
デ・シーカの特に40、50年代前半作品は戦後の厳しい生活を描いたものが多いですが、これも又そんな作品です。 ウンベルトは退職公務員でアパートに一人暮らしの老人。家賃が大幅に値上げされ、おまけに滞納分を払わなければ即刻立ち退き、と家主に言われる。しかし、わずかな年金ではそれもままならない。退職記念の金時計も半値でも売れず、家主がウンベルトの部屋を勝手にホテル代わりに使っても文句を言う事しかできない。ある日風邪を引き熱を出したウンベルトは病院へ行く。そのまま病院にいれば家賃も食べ物にも困らないのだが、医師はもう良くなったから退院して良いと言う。 この時代乞食も多かったのでしょうね。どうしようもなくて乞食も試みるのですが、どんなにお金に困っても毎日きちんとした身なりのウンベルトはプライドが邪魔をして出来ません。病院にもいられない、本を売ったお金で家賃を渡しても全額でなければ受け取らないと意地悪な家主。おまけにこのアパートは改装されようとしていて、ウンベルトの部屋は壁紙を剥がされ壁には穴が開けられる始末。そして彼の行き着く先は。 もう悲しくて、切なくて仕方ありません。日本も今お年寄りの孤独死や自殺が増えていますが、この映画を観ているとそれと重なってしまいます。 この時代の貧しくても力強く生き抜くイタリア市民を描いた作品が多いデ・シーカですが、この場合は一人暮らしの老人で、誰も頼るものがなく、下宿の賄をしている女性だけが唯一彼の話を聞いてはくれますが、それも心もとない。ただ心の拠りどころは愛犬。その愛犬との関係で、「ハッ」と思わされるシーンがありますが、そこは言いますまい。 ラスト、これからどうなるのかは観客の判断に委ねるパターンですが、ただただ切なくてため息の出る映画なのでした。 UMBERTO・D 1951年 イタリア 監督:ヴィットリオ・デ・シーカ 脚本:チェザーレ・ザヴァッティーニ 出演:カルロ・バティスティ、マリア・ピア・カジリオ、リナ・ジェリナ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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