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テーマ:映画レビュー(894)
カテゴリ:イギリス映画
≪ヴェラの信念は?≫ 戦後数年経ったロンドン。ヴェラ・ドレイクは家政婦の仕事をしながら、近所のお年よりや身体の具合の悪い人の世話をしていた。夫、娘、息子に囲まれた笑顔の絶えない温かな家庭を築き幸せに暮らしていたが、彼女には家族が知らない秘密があった。望まない妊娠をして困っている女性達の為に、非合法の中絶の手助けをしていたのだ。 面倒見が良くて、誰からも「良い人」と思われているヴェラ。 中絶の仕事は、彼女には一銭も入らず、彼女は心から困っている人の為にボランティアとしてやっていたのだと思います。お金があれば、きちんとした理由があれば医療機関で中絶をする事も出来るけど、それが出来ずに本当に困っている人の為に、と思っていたヴェラ。 しかし、その方法はあまりにも危険で無知で、これでは絶対に悪い結果になってしまうとハラハラしながら観ていました。でも、ヴェラはいつも笑顔で「一日、二日たったら流れるから」と言い残して去っていってしまうのです。 警察が訪れてからの彼女は、それまでの明るさ、笑顔が一転、目に涙を浮かべ、身体を小刻みに震わせ、後悔の念で一杯の表情を見せます。この映画の一番のポイントはここかもしれません。ヴェラのいろんな表情を巧くイメルダ・スタウントンが演じていますが、特に悲しみの表情には観ている方もどんどん引き込まれてしまいました。 あんなにサッサと事務的に中絶の手助けをしていおいて、警察が来てからのヴェラの様子の違いに若干違和感がないこともありません。ただ、彼女はあくまでも「困っている人を助けた」としか言わないんですよね。だけど、判っていたから、もしかしたら心のどこかほんのちょっとだけ、こうなる事を予測していたのかも。 ドレイク家に訪れたいくつもの幸福が、ダダーッと崩れ去るような出来事ですが、彼女を信じ、守ろうとし続ける家族の愛情がヴェラを支える姿。最後のシーンは心に鉛を落とされたようにズシーンと来ます。 ヴェラは又同じ事をやってしまうのか、それとも後悔の念ではりさけそうで、二度と同じ過ちはしないと思っているのか。 愛情に溢れた家族が待っているのだから、後者だと思うのですが。 全ての登場人物の描写が実に丁寧で、当時の背景や部屋のセットなどもとても興味深く観る事が出来ました。 PG12指定 VERA DRAKE 2004年 イギリス/フランス/ニュージーランド 監督/脚本:マイク・リー 出演:イメルダ・スタウントン、フィル・ディヴィス、エイドリアン・スカーボロー、ダニエル・メイズ、アレックス・ケリー、エディー・マーサン、へザー・クラ二ー DVD お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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