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テーマ:フィギュアスケート(3628)
カテゴリ:フィギュアスケート
そして今回の「鐘」。もう何度も書いたが、最初に「鐘」のフリーを観た時は、「何でこれで?」と思った。あの時初めて聴いたこの曲の暗さと言ったら、重さといったら、そして難しいプログラムと言ったら。オリンピックを控え絶対に曲もプログラムも変えた方がいいと、真剣に手紙でも出そうかと思ったくらい。タラソワさんが温めていた曲だし、誰にでもは滑れない曲だから真央ちゃんに滑らせたかったのだろう。そして浅田真央も、自分を後押ししてくれるような曲にしたかったとこの曲を選んだのだし、成果が出なかった後もこれで行こうと変えなかった。しかし、オリンピックの開催地はカナダだった。明らかに「鐘」と言う重厚で、難しい曲にはあの地の、あの観客には合っていなかった。いや、今までの浅田真央を観てきた人のほとんどが違和感を持っただろう。確かに、彼女の今まで選んで来た曲とはあまりに違うし、完成度を高めないと現在の採点方式では勝てない事も分かっていた筈だ。実際グランプリシリーズでやってみてダメだった事は証明済み。しかし、恐らくこのオリンピック、今シーズンは真央ちゃんが、3Aを重要視しようがしまいが、(安藤美姫も)どんなに完成度を高めようが、恐らく勝てなかっただろう。実力がなくて勝てない、と言っているのではない。そのようにあらゆる力が動いていたと言う事。 こういった事を書くと、いかにも負け犬の遠吠えみたいに言う人がいるが、そうではない。残念ながら、ソルトレークでジャッジの問題で大幅なルール改正はされても、今のルールに落とし穴はいっぱいあり、採点はどうにでもなる、と言う事がこの数年で、特に今回のオリンピックで露呈されてしまったと思っている。SPでヨナが真央ちゃんより滑走順が後だったからあの位の点数差になったのだろう。本当は私は真央ちゃんの方が上に来て当たり前と思っている。3Aを跳んだからではない、他の要素でも真央ちゃんの方が優れていると思っているからだ。ジャンプランディング後の流れなどはヨナ選手はスピードもあるし美しいと思う。しかし、よく観て御覧なさい、と言いたいのは、スパイラルもビールマンスピンも明らかに真央ちゃんのポジションの方が美しいし、シットスピンも深い。SPのレイバックスピンでは、ヨナ選手はスピードはあるけど軸が怖ろしく最初の位置よりもずれているが真央ちゃんはほとんどずれていない。ストレートラインステップなんて、二人比べたらエッジの深さが全然違うし、ヨナはステップの最後でよろけたよね。生放送を観ていて「アラッ!」と思ったが、八木沼さんも刈屋さんも何も言わなかった。元々この人のステップはスイスイ滑っているようで、どこかヨロヨロと危なっかしいと思いながらいつも観るが、今回のSPの最後は確実によろけてた。何度観てもよろけてる。少し脱線したが、最近の流れでは、ヨナ選手の見合わないような高得点と、真央ちゃんのミスもあったりしてSPで10点以上の差を付けられてしまっていたが、今回はそれでもやっとこの位の差で抑えていると思った。今回のSPでヨナの演技であの点差以上の差を付けたら、それこそスキャンダルだ。 フリーではヨナ、真央の順になってしまった。SPでは真央が完璧だった。公式練習でもバンバン3Aを跳んできている。一方ヨナは練習でミスが何度か出ている。ヨナの後で真央がどんな素晴らしい演技をするかわからない。そうなりゃヨナに点数を出しておかなきゃ。加点、加点、どんどん、どんどん加点。あれがもしフリーで真央とヨナの滑走順が逆だったら、ヨナの点数があそこまで伸びたか??ヨナ本人も出ても140点ぐらいかと思ってた、と言ってたし、内心オーサーも出過ぎって思ったかもね。いや、140点も出過ぎだろう。 SPの『007』は確かにボンドガールを艶っぽく演じていた。しかし、多くの方が言っているが、あんなに有名な曲はあれしかないだろ。どこをどう表現したってあれだ。リンク先のせしるんさんの言葉を借りると、「そもそも007の曲の解釈って・・・w無論、私は映画好きなのでジョン・バリーを貶める気は全然ないけど、どう考えても解釈なんて要らないではないか。」である。全く同感である。止まって笑って指パッチン、で加点がもらえるのだから。あれだったらエキシビやアイスショーで充分。 以前からヨナ選手は美しいスケーティングをしていたが、もうずっと以前に書いたことがあるけど、彼女がニターッと笑う表情が好きではない。失礼を承知で敢て言うが、あれはどうみても大衆演劇で梅沢富美男が「ニッ」と笑うあれだった。でも、ヨナのあの「ニッ」も最近では自然になってきたとは思うが。 ヨナのフリーに至っては、確かにスイスイと滑っていったがポジションはイマイチだし、相変わらずシットスピンは浅い。ストレートラインステップは、エッジが浅くて又もやヨタヨタ感が拭えない。ただ、彼女が日本選手よりももっと大きなプレッシャーを感じながら挑んだであろうこの大会で、実に落ち着いて一応ミスなく滑った事には精神的な強さも含めて凄いと思う。だけど、やはり何度観ても感動はない。何を表現しているのだろうか。今回真央ちゃんの他に印象に残ったのは、ロシェットのSPであり、鈴木明子の「ウエストサイド・ストーリー」であり、未来ちゃんの「カルメン」だった。恐らく、私にとってはヨナの今回のオリンピックは、リピンスキーやヒューズと同じようなゴールドメダリストの印象しかなくなるだろう。 真央ちゃんは「鐘」の曲調やプログラムなどから、そして3Aの大技をやってのけたにもかかわらず、エレガントで実に「品」がある選手だ。人々の苦悩を見事に表していたではないか。このプログラムをフランス大会の時から何度も観てきたが、どんどん良くなっていき、今回のミスしたフリーにも関わらず、何度観ても、観れば観るほど伝わってくるものが大きくなって、よくぞこの曲を、と又改めて感動する。 そして、音楽家の立場から今回のオリンピックでの演技の感想を述べられたブログがあるので、ここに紹介したい。 『音楽の大福帳』と、『Risa's音楽雑記』 フィギュアスケートのジャッジは、選手が使う曲について勉強しているのだろうが、彼らがどのくらいの理解をしているのかは怪しい所だ。ファイブコンポーネンツの「曲の解釈」部分を本当に採点できるジャッジがいるのか。広く知れ渡った曲なら観客もジャッジも評価しやすいのなら、そういう曲を選んだ方が得である。今回「鐘」を選んだ真央陣営は戦略ミスだったとも言える。これがソチでのオリンピックなら、ヨーロッパなら又違っただろう。しかし、観客受けがいいから、とか難曲だからとか言った基準で採点が作用されるなら、それはジャッジの怠慢だ。プロとしてのジャッジは成り立たないのではないか。選手の演技の質よりも、ジャッジの質の方が問題だと思う。 以前荒川静香が SPORTS COMMUNICATIONSの二宮清純さんとの対談で採点システムやジャッジについて言ってるが、まさしく私達の思っていることを彼女も感じているわけだ。 でも、テレビなどではなかなか言ってはくれない。やはり言えない何かがあるのだろうか。彼女達が声を上げて言ってくれると影響大なのだが。現役の選手達や、フィギュアに関わっている人は言いにくいのかもしれない。ISUに物申す日本のスケ連ではなさそうだ。だったらファンの声はとても大切なのではないだろうか。 因みに、今回女子のフリーでは日本人ジャッジは抽選で外された、と言う事だが(韓国人、カナダ人ジャッジは入っている)、ベスト10以内に入っている選手の国のジャッジは全員入れるべきだと思うのだが。今回その点でも、抱かなくてもいい疑惑の念を抱いてしまった。 選手達にも言いたい事はたくさんあるのだろうと思う。ジャッジに文句は言えないだろう。ジャッジを信じていなければこんな採点競技はやっていけないだろう。ソルトレークでのジャッジに不信感を抱いたスルツカヤが、トリノでふとよぎったジャッジへの不安。これがミスに繋がった。こんな事を選手達に思わせてはいけないのだ。 色々書いてきたが、浅田真央が他の選手達との決定的な違いは「品」があるところかもしれない。「品」とは、もちろん彼女のスケーティングからも感じ取れるのは当たり前だが、フィギュアスケートと言う競技への姿勢とか、マスコミへの対応とかいろんなものから感じ取れるのだ。 恐らく今月末の世界選手権でも今までの流れは変わらないだろう。しかし、私は今度こそ完成された浅田真央の「鐘」が観たい。 最後にこの方のブログを紹介する。 「山本哲士公式ブログ」。特に2月24日から3月7日の記事は興味深い。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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