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テーマ:映画レビュー(894)
カテゴリ:イギリス映画
『アラビアのロレンス』や『ドクトル・ジバゴ』のデヴィッド・リーン監督作品。 この監督の作品は、壮大な自然をバックにだったり、スケールが大きかったりするものが多いのですが、本作もアイルランドの美しい風景とともに描かれる作品です。それと共に、その時代の社会的な背景が絡んでいますね。 秘かに独立運動が行われていたアイルランドの港町。休暇で町を離れていた教師チャールズが帰ってきた。以前からチャールズに想いを寄せていたロージーだったが、年の離れた若い娘の気持ちになかなか応えることの出来なかったチャールズ。しかし、とうとうロージーの熱烈な求愛に彼はロージーと結婚する事に。しかし、いざ結婚するとロージーは、町の近くに駐屯していた英軍守備隊の司令官ランドルフに心を奪われてしまう。 この映画の初見は小学校高学年か中学生の頃、正直私はロージーみたいな女って嫌だ、と言う印象を持っていたと思います。結局不倫の話ですからね、チャールズが可哀相で。自分が好きになって押して結婚したくせに、他の男性を好きになったわけだから、そんなの十代はじめの頃に観たら共感できないに決まってます。『ドクトル・ジバゴ』もなんか同じ印象なんですが。その年代って潔癖だし結婚してるのに何で?って思いもあったのだろうと思います。 私は『アラビアのロレンス』は大好きなのですよ。男のロマンを持った切なさと、あの砂漠の風景と、音楽と。しかし数年前に久しぶりにこの『ライアンの娘』を観たら、最初に見たときの印象とは変わってしまってましたが。 若い頃って、女性は必ず一度はちょっと年の離れた男性に惹かれませんか?私は働き始めた頃、一回りくらい上の人に惹かれたことがありましたし、私の友人の何人かもそういう経験のある子達がいました。同年齢の男性よりももちろん仕事は出来るし、気は利くし、包容力はあるし、というか、そういう人たちが多いですから。ただの憧れから不倫に発展して、辛い恋をしなければならなかった友人もいました。私は幸い憧れで終わりましたけど。そのうち自分が年をとってくると、それ以前は想像すらしなかった年下の男性をいいな、と思ったりもしましたし。 だから、ロージーが一瞬「何で?」と思うような年上の教師を好きになる気持ちも分からなくは無いのです。ただ、やっぱり夜の生活に物足りなさを感じてしまうわけです。そこで登場するのが、第一次世界大戦で足を負傷し、精神的に不安定なものがあり孤独を抱えた英軍司令官のランドルフ。ロージーが彼に惹かれていくのも今は分かる。ただ、誰に一番同情するかって言ったら、それはやはりチャールズに、なのです。 ここでも結局誰も幸せにならないのだろうな、と思えるラストが、デヴィッド・リーンと言う人は不倫の映画を作るけど、結局は不倫は決して人を幸せにはしない、と言っているような気がします。 ここでは、アイルランドの独立運動を絡めて、弱者や裏切り者への容赦ない仕打ち、心の狭さや醜さと、それに反比例するように、厳しいけれども一貫して温かい心で接し、諭してくれた神父の言葉が印象的。 「夢を見るのはいいが、育ててはいけない。夢は身を滅ぼす」 これは、ロージーに対しての言葉です。 崖を白いパラソルが落ちていく冒頭のシーンとジョン・ミルズがとても記憶に残ります。 RYAN’S DAUGHTER 1970年 イギリス 監督:デヴィッド・リーン 脚本:アンソニー・ハヴロック=アラン 出演:ロバート・ミッチャム、サラ・マイルズ、トレヴァー・ハワード、ジョン・ミルズ、クリストファー・ジョーンズ、レオ・マッカーン 他 【22%OFF!】ライアンの娘 特別版(DVD) 映画チラシ/ライアンの娘/D・リーン監督/1970年・英米/B5判【中古】楽オク中古品 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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