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テーマ:映画レビュー(894)
カテゴリ:日本映画
言わずと知れた村上春樹の大ベスとセラー小説の映画化作品。 原作は発売されて間もなく読みました。当時かなり話題になっていたし、その当時は話題になったものには割りと早く飛びついていた方でしたから。これが今は逆の傾向にありますが。まず、小説にいたっては余程の事がない限りすぐには買わなくなりました。文庫本が出てからでいいや、とか。ノンフィクションものは意外に早く手に取りたくなるのだけど。映画も、昔に比べて今ではすぐにDVDが発売になったりするから、どうしても観たい、と思うものしか映画館に足を運ばなくなりましたね。まあ、時間的制約もあるからなんだけど。でも、映画は本当はあの大きなスクリーンで観るのが一番良いとは思っているのです。家とは違う、「さあ、今から始まるよ」という独特の雰囲気を持つ映画館は、そういう意味ではコンサートなんかと比べると格安で、極上のエンターテイメントを楽しめる場所なのですから。中には極上とは言えないものものありますが、それも含めて特別なものを楽しめるという空間に違いはありません。 小説『ノルウェイの森』は23年程前に読んでいるのですが、正直内容はほとんど覚えていなかったのです。ただ、やたら人が死んで、何とも言えない絶望感というか、そういう小説だったな、と。そしてちょっと希望のあるラストだった、と、実はそんな事しか覚えていなかった。だから、昨年映画化された時、観たいけどもう一回小説を読んでからにしよう、と思っていたのですが、昨年の12月相方と一緒に人と会う予定があり出かけたら、先方が予定の時間より遅くこちらに到着となってしまい、時間が出来て観る事に。別に二人とも絶対に『ノルウェイの森』が観たかったわけではないのだけど、他には全然観たいのがなかったし、昔お互い読んだ事のある小説の映画だというので、まあ、ある意味仕方なく観てしまった、という感じなのです。 ワタナベとキズキは親友で、キズキには直子と言う女子校に通う恋人がいる。3人はいつも一緒で、楽しい高校生活を送っていた。しかし、ある日キズキは突如自殺してしまう。癒されない悲しみを背負ったまま、東京の大学生活を送るワタナベ。そんな時彼は偶然に直子と再会する。共に喪失感を持った二人は次第に惹かれあっていくが、二人の関係が深まるにつれ直子は心のバランスを崩していく。 「こんな話だったっけ?」というのが観終わってからのお互いの感想でした。私も家のも、昔読んだ時そんなにこの小説に感動しなかったのでしょうね。 まあ、小説がどうのこうのということよりも、映画だけをとってみたら、60年代後編から70年代初頭の雰囲気はとてもよく出ていたと思います。その当時私は小学生なのでそんなに細かいところまでは覚えていないのだけど、ファッションとか、部屋の小物とか、なんかとても懐かしい雰囲気が画面から漂ってきていました。それと、撮影場所はどこなんでしょう。あの美しくも荒涼とした草原と、しんとした空気感が伝わってくる映像が素晴らしかった。緑の美しさや雨の匂いも感じられる。画面もセピア色っぽくて、実際の60年代の映画を観ているような映像。この辺が日本人監督だったらどうだったのか、上手く表現できなかったのか。 キャストは、松山ケンイチが高校生役で登場したのには何も違和感はなかった。でも、菊地凛子はいかがなものかと思っていたら、制服姿でおかっぱ頭の彼女は、もう、まるで女子高生で恐ろしくもあるほど。 やたらとワタナベと直子の絡みのシーンが多く、私も家のもそこが「そんな映画だったっけ?」と思わず言ってしまった所以です。人の死が、その後の青春期に多大な影響をもたらしてしまったという作品でした。だけど、生きている者、生身の人間は前に進まないといけないので、若者のそこには必然と「性」が絡んでくるわけでそこは致し方なかったのか、原作もそうだったのか、もう一度読んでみない事にはわかりません。 「死」の悲しみと「生」の喜び、生きているから死を感じ、死を知ったから生きる事の喜びを大切にしたい、そういうことなんでしょうか。 雰囲気はいい映画。最後にビートルズの『ノルウェイの森』が流れた時には、改めてビートルズっていいな、って思いました。 ただ、何となくモワ~ッとした感じではありました。 そう、やっぱり、もう一度原作を引っ張り出して読んでみないことには、「こんな話だった?」と言う思いだけが映画の感想を占めてしまう気がしてならないのです。 NORWEGIAN WOOD 2010年 監督/脚色:トラン・アン・ユン 原作:村上春樹 出演:松山ケンイチ、菊地凛子、小原希子、玉山鉄二、高良健吾 他 【送料無料】ノルウェイの森(上) 【送料無料】ノルウェイの森(下) 《送料無料》ジョニー・グリーンウッド(音楽)/ノルウェイの森 オリジナル・サウンドトラック(CD) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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