私がこの話を今日まで書かなかったのは、文にするとそれほど長い時間 いろいろなやり取りを、その相手としたわけではないからかなと、 今そのことがあった日の手書き日記を見て思った。
起こったことは、忘れられないほどインパクトが強く、その姿を思い出すと
今でも信じられないほど。 今までいくつかこのカテゴリ「不思議の人々」へ書いた話は、それなりに 何度か試みたりしている。 (何を試みたかはカテゴリの過去記事を参照で…)
つまり、今日書くことは短時間のうちに、あまりにあっけなく感覚としては普通に
起こったことだったのである。 にもかかわらず、というよりはだから余計にあれは一番すごかったなあと 今でもしみじみ思う、そんな出来事だったのだ。
それは2008年7月26日のこと。
その時期、毎週土曜日は住民運動の署名活動のために、駅や周辺で チラシ配りをしていた。 駅への往復は徒歩で、片道30分。 帰りは100均でアイスモナカを買って頬張り、帰路の半分を過ぎた辺りの スーパーマーケットの前のベンチで、一服しながら休憩することにしていた。 この日、スーパーのベンチに座っていると、買い物客が小型犬のリードを 何かに繋いでいった。 私は心の中で犬に『Sit down』と言ってみたが、私の顔は見るものの お座りはしなかった。
そこへお母さんに手を引かれた1歳過ぎ、2歳未満くらいのオシャブリをした
可愛い女の子が、犬に興味を示して近づいてきた。 オシャブリをしているので声は出ていないんだけど、その子が犬を指差しながら 視線というか表情で、しきりに私に何かを話しかけてくる。 私は『うん、ワンちゃんだねぇ、可愛いねぇ』と、声を出さずに答えていた。 そうしていたのはほんの数分だったと思う。 女の子がお母さんに手を引かれて、その場を去って駅方向へ歩いて行った。 私もベンチを立った。
その時女の子と私の距離は、どれくらい離れていただろう。
5メートル以上はあったのだけど、どれだけ離れていても関係はない。 なにせ私は、離れていく女の子の後姿に向かって、声に出さずに言ったのだから。
『 Bye Baby 』
そのとたん、女の子は振り返った。
それだけではない。 精一杯広げた小さな右手で、可愛くバイバイと私に手を振ってくれたのだった。 これが…どれほど感動的なものだったか、想像してもらえるかなあ…。 補足すると、女の子がベンチ前、つまり私の前にいる間、彼女のお母さんは 他の誰かと話しをしていた。 彼女が手を引かれて行ってしまってから、私が心で声をかけるまでの間、 私は目で彼女を追っていたけれど、彼女は一度も私のほうを見なかった。 なので、なんで私が後ろにいることがわかったんだろうということも、 普通に考えると不思議だなあと思った。 店の前には、買い物客がけっこういたんだけどね。 ★ スパイス・ガールズ/Viva Forever ★ |