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2013.02.03
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             一報は、28日の夜何時だったろう。

             その人からの初めての電話だったということだけで、

             話を聞く前にすでに、内容の半分は理解できたようなものだった。

             それは、母が住む伊豆のアパートの大家さんからだった。


             大家さんの台所の窓から母の部屋の西の窓が見えるのだけど、

             27日は夜の部屋の明かりが点かないなあと思っていたそうな。

             翌日はとても暖かくて良い天気だったので、こんな日なら洗濯をするはずだし、

             毎日よく外を歩いていた人なのに28日も外へ出てこず、夕方南側から2階の

             母の部屋の窓を見上げると、部屋の電気は消えているのにテレビが

             点いているらしく、青い灯りがチラチラしていたとか。


             これはもう絶対におかしいと、部屋へ行ってインターフォンを押すも返答はなく、

             ドアノブを回してみたら鍵がかかっていなかったので、開けてキッチン向こうの

             部屋を見たら、母が仰向けに横たわっていたそうな。

             声をかけても返事がないので、救急車を呼びましたとのことだった。


             いつかは来ることと、覚悟はしていたつもりだった。

             ああ、来たんだな…。長命の血筋なのでもっとずっと先だと思っていたのに。

             話しの様子で、おそらくは…。

             と、いうことは、このケースはこの後ああなって、こうなるか…。

             頭の中でシミュレーションし始める。


             程なくして救急隊員からの電話。

             呼吸、脈拍は止まり、死後硬直が始まっており、蘇生措置も出来ない状態。

             よって、病院への搬送は出来ないことと、後は犯罪性の有無を確かめるため、

             警察へと引き継ぎますので、私たちからの連絡はここまでで、次は警察の

             担当者から連絡があると思いますとのこと。


             さて、この時点の一番の気がかりは、大家さんが付きっ切りになってしまうと、

             さらにご迷惑をかけることになる。

             病院での死亡ではないので、検死になるケースだから。

             となると、私にできることは何も無いので、急いで駆けつける必要性がない。

             時間的に、やがて電車もなくなるが…。

             警察からの連絡がないと、その辺の状況がどうなるかわからない。

             そこがはっきりしてから大家さんへ、私が行くのがいつごろになるかを

             連絡したほうがいいかもしれない。


             田舎の母の一番上の姉へ連絡したのは、この時点だったと思う。

             男女4人ずつの8人兄弟姉妹で、2、3年前に長男が亡くなっているが、

             母は兄弟全体では6番目に生まれた。

             長寿の家系の、私から見ても羨ましいほどの仲良し兄弟姉妹であった。


             「母が、亡くなりました」


             一連の経過を話し、民生委員をやっていた人なので、知っていると思うけれど、

             おそらく検死になるはずなのでと。

             そして一番重要なこと。

             生前母が自分が死んだ時は、位牌や僧侶も葬式も要らないと話していたこと。

             伯母たち兄弟姉妹は高齢であり、場所も離れているし、今は一番寒い時期。

             最後のお別れをしたいと思われるかもしれないけれど、母の希望通りに

             進めるつもりでいるので、申し訳ないけれど…と。


             ああ…と衝撃と悲しみの入り混じった深いため息と共に、伯母は言った。

             「ありがとう、おばちゃんたちも本当にもう歳だからね、結ちゃんにそう言って

             もらえると本当にありがたいんだよ…」

             それは、すっと胸をなでおろせる言葉だった。


             「おばちゃんこそ、結ちゃんが一人でどれだけ大変だろうと思うと、

             何も手伝えなくて申し訳ないよ…」

             この伯母の震えた声を、初めて聞いた。

             もう80を過ぎている伯母の体のほうが、よほど心配だ。


             以前のブログには少し書いたのだが、母は夫、つまり私の父親の

             ドメスティック・ヴァイオレンスに耐えかねて、私が高校1年の冬休みに、

             家を出て行った。

             なので母は、兄弟の中で独り郷里から一番離れた場所に住んでいたのだ。


             とにかく、何か出来ることを進めておかなければいけない。

             伯母への電話の後、荷造りを始めた。

             母は伊豆にいるというと、必ず「暖かくていいねぇ」と言う言葉が返ってくる。

             暖かいのは海沿いの方だけで、母の場所は私が現在住んでいる場所より、

             ずっとずっと寒い。


             夜9時を廻って、息子が帰ってきた。

             「ばあばが亡くなったって」

             「えっ!」

             息子にも一連の説明をする。


             以前も書いたけれど、普段息子とは滅多に喋らない。

             ただ、ちょっとしたきっかけがあればディスカッションできるようになったのは、

             ここ最近のことだ。


             そんなところへ警察より電話。

             内容は救急隊員がした話とほぼ同じで、あとは最後に母に会ったのは、

             話したのはいつか?持病は?飲み薬は?などの事情聴取。

             なかなか話しに出なかったので、私のほうから検死について切り出す。

             そして、もし可能であれば、明日私が迎えに行くまで署のほうで遺体を預かって

             いただけると、大変ありがたいのですがと言うと、私は今署からなので、

             現場の署員がどう判断するかまだわからない。伝えておきますので、

             のちほどまた連絡が行くと思いますとのことだった。


             それまであまり話さなかった時間を埋めるように、息子と話すのであるが、

             私の母の事情やそれに関する私の気持ちなどを、これまでは話したことは

             なかったのだけど、少しその辺のことなども話した。

​​ Little Journey Of My Soul - 2 - ​ 


★ Styx - Boat On The River ★






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最終更新日  2023.10.18 12:30:05
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