​　　　　　　　　　　　　　2度目に伊豆へ行ったとき、​お役所仕事​を職とする人達がいる部屋の​

　　　　　　　　　　　　　受付にいた私の横へ、出生届を出しに来た見知らぬ新米お父さんに、

　　　　　　　　　　　　　思わず言ってしまった。

　　　　　　　　　　　　　おめでとうございますっ！

　　　　　　　　　　　　　そういうことをする私は、万が一公務員になれたとしても、

　　　　　　　　　　　　　せいぜい目の上のたんこぶなんだろうなあ。

　　　　　　　　　　　　　H君、配属部署にもよるかもしれないけれど、あなたは優しすぎるから、

　　　　　　　　　　　　　公務員になっても良心の呵責に耐え切れなくて続かなかったかも。

　　　　　　　　　　　　　それであの子が、まさかあそこにいたなんて。

　　　　　　　　　　　　　じゃ、あの時あの場所で声をかけてくれたのは、

　　　　　　　　　　　　　余程のことと解釈していいんだ。

　　　　　　　　　　　　　お役所の仕事外のことを、思わずしてしまったのだから。

　　　　　　　　　　　　　だからそれが誰で、どこなんだよ…って話しだな。

　　　　　　　　　　　　　何やってんだろ、私は。┐(-｡ｰ;)┌

　　　　　　　　　　　　　ん？え～っと、あの子が声をかけてくれたのは、最初に伊豆へ行った時

　　　　　　　　　　　　　だったかもなあ。

　　　　　　　　　　　　　いろいろありすぎて、記憶が怪しい…。

　　　　　　　　　　　　　2ヶ月分の話がゴッチャに入ってるし。

　　　　　　　　　　　　　あの時、もしも義母がちゃんとした人で、番号を私の父方の叔母に教えなかったら、

　　　　　　　　　　　　　今日の私はどうしていただろう。

　　　　　　　　　　　　　もしかしたらここまできてやっと、教えてくれてさんきゅっ！に転じたかも？

　　　　　　　　　　　　　いや、まだ蓋が半分しか開いてないんで、イマイチわからんが。

　　　　　　　　　　　　　自分は寅年なもんだからさなんて、干支で性格なんざ決まらんよ、Eちゃん。

　　　　　　　　　　　　　なまじ反面教師が身近にいると、私の性格が似てるって、子どもがいない

　　　　　　　　　　　　　Eちゃんが嬉しそうだったので、ま…いっか。

　　　　　　　　　　　　　とにかくお役所にゃまいるね、ったく。(。-`ω-)ンー

　　　　　　　　　　　　　それにしても…いやあ、話しを聞けば聞くほど、

　　　　　　　　　　　　　ありゃほぼ満場一致だったんだろうなあ。ねえ、ばあば。

　　　　　　　　　　　　　あの時タカシへ宛てた手紙が、もしかしたら手に渡っていなかったかもしれない

　　　　　　　　　　　　　なんて、考えてもみなかった。

　　　　　　　　　　　　　そのことにもっと早く気がついていれば、他に方法も…。

　　　　　　　　　　　　　アイツがそこまで堕ちた人間だったとは。

　　　　　　　　　　　　　あの日感じたあの衝撃の元が、どこにあったか後になってわかった。

　　　　　　　　　　　　　あの形容しがたい違和感。奇妙な感覚。

　　　　　　　　　　　　　おまえも、異議なしだったろうな。

　　　　　　　　　　　　　だって、その決定は今生では慈悲だってことに、1ヵ月経って気づいた。

　　　　　　　　　　　　　おかげで私は、何ものにもなれなくて苦しむことはない。

　　　　　　　　　　　　　それで充分だよね、タカシ。

　　　　　　　　　　　　　わざわざ口にして善人ぶることもない。

　　　　　　　　　　　　　ほら、おまえも知ってるだろう。

　　　　　　　　　　　　　目が点になって、しばらく戻らんかったね。(・_・;)

　　　　　　　　　　　　　時々考えていた。

　　　　　　　　　　　　　おまえには…青春がなかったかもしれないと思うのは、

　　　　　　　　　　　　　それは違うの？

　　　　　　　　　　　　　生きて語れるだけ、私は恵まれてる。

　　　　　　　　　　　　　おまえが先だった意味を探しはしないけど、私が残ったという意味は

　　　　　　　　　　　　　これから形にするから、しっかり見守っててくれよ。

　　　　　　　　　　　　　お姉さん、へなちょこだからさ…（￣。￣；）

　　　　　　　　　　　　　しかし…なんでまたおまえは、私を「お姉さん」なんて呼び始めたんだかなあ。

　　　　　　　　　　　　　お姉ちゃんのままで、お姉ちゃんの方が良かったのに、一年坊主。

★　荒井由実 - あの日にかえりたい　★