先日海洋葬を請け負う会社より、手紙を添えた請求書が届く。遺骨の粉末化、水溶紙による包装、
用船代、献花、献奏、献酒、写真撮影、保険、証明書、骨壺処理等が含まれた料金で、値上げ前
の消費税込みで4万2千円。予定する散骨場所も書かれていた。
本日、「明日13日午後1時半頃、相模湾沖に散骨致します」との連絡有り。散骨後にも終えた旨
の連絡をいただけるそうだ。遺骨に対して特別な感情、思い入れを持つのが極普通のことなんだ
ろうから、これくらい丁寧なのが思いやりなんだろう。扱うのは遺骨だけれど、その実は人の表
しきれない万感の思いを扱っているんだし。
電車内やコインロッカーに遺骨の忘れ物があり、引き取りに来る人がいないという話はよくきく。
私の経験では骨壺が入った骨箱に「火埋葬許可証」が入っていますと説明され、一緒に入れられ
て渡されたので、関東の方ではそれが通常なのかと思う。関西地方では骨は一部だけ入れるため
骨壺はかなり小さいそうなので、埋葬許可証は別に渡されるのだろうか?最初から一部しか入れ
ないというのが、そのことと心の問題は別なことだと思うので、骨は単純に物質だと思う私には、
なんだか合理的でさっぱりしていていいなぁ。
火埋葬許可証には、故人が亡くなった住所や火葬した火葬場名、もちろん申請した私の名や住所
も記入されている。なので遺失物の遺骨にそれが入っていなかった場合、意図的な放置なんだろ
うな。その後もし放置した人間が判明した場合は、違法投棄ということになるらしい。
死んだら必ず墓が必要と思っている人は多いと思う。遺骨の始末に困った挙句に、墓地の隅に置
いてきたとか、岸壁からそのまま海に投げ入れたなんてこともあるんだそうだ。一番の責任は、
遺骨を放置した人間かもしれないが、これまで遺骨は墓に納めるのが当たり前ということにして
きた者はだれなんだろうと思う。
自然葬というのは、必ずしも葬儀屋や僧侶などによる専門職の手を借りずとも、きちんと節度を
守って行えば、自身の手でもできるそうだ。妙な言い方かもしれないが、私はそれにあこがれる
し、それが許されている事実はうれしいくらいだ。
それにしても、関西地方のように小さい骨壺なら、田舎へ持って行くのが楽だったのになぁとつ
くづく思う。亡夫の時などは風呂敷に包んでも箱の四隅が出てしまい、それをさらに紙袋に入れ
てもタクシーの運転手に骨壺だとばれていた。大きくて席で膝に抱えることもできなかったが、
乗り換えの必要がない電車があったので助かったようなしだいだ。
母の時はもしかしたら、もっと小さい骨壺も希望できたのかなぁ…。申し込みの時にできれば小
さいものがあればと言ったら、葬儀社へ伝えておくと言われ、たまたま1サイズ小さめのものしか
なかったんだったかな。もう覚えてないけれど、希望しても全くかまわないことであるのは確か。
質問サイトの回答者の中に、全部の骨を骨壺に入れないと、あの世へ行ってから困ると、真面目
に書いていた人がいて、何だか気の毒に思った。関西人じゃないのは確かだな。
あら…今21:22。いやあ…久々にお線香のにおいがするわ。
いくら私が骨は物質だと思っていても、母の兄弟姉妹など私以外の人にとってはそうではないこ
とは理解しているし、頭からずっと離れなかった。骨そのものがどうこうということでなく、
今生では二度と逢うことが叶わなくなってしまった姉妹への思慕と、自身に事実を言い聞かせる
ためのけじめは、どんな形であれ必要だろうと思う。その思いに気持ちを添わせると、自分にも
遺骨への何らかの感情が湧くことも否定はしない。
明日の相模湾での散骨以前に、東京湾での散骨予定があったんだが、業者が静岡に近くて海も綺
麗なのでと、相模湾にしてくれた様子。私は何も希望しなかったけれど、確かに、あの汚れた東
京湾よりはいいと印象で思ってしまうが、思い入れがあれば東京湾を希望する人もいるわけで、
やはり全ては「自分の心が決める」こと。言いなりでなく、自分で決めていいのだ。
最近聞かれる散骨後に、ほんの一部の遺骨を手元に置く「手元供養」などというのは、何か既成
宗教への不信感が形になったような印象さえ受けるのだ。たまにしか行けない遠く離れた場所の、
冷たく暗いイメージの石の囲いの中より、同じ屋根の下で生前同様に自分の身近にいてほしいと
いう思いがそれをさせるんだろうなぁ。
ちなみに、私が依頼したこの業者は葬儀社ではないんだそうだ。社名がいいなあと思ったのと、
HPを読んでみての印象も良かった。問い合わせの電話をした時に、委託ならばネットの問い合わ
せフォームからの申し込みだと、さらに低料金になることを教えてくれた。
私にはサービス過剰としか思えないんだけど、スピリチュアルっぽい名がついたアフターケアと
称したものがあるのに、もう一方でオプションで骨の一部をお寺で永代供養だとか、ポリシー
のよくわからない業者もある。様々なニーズに応えてのことなんだとは思うけれど、私の思うと
ころとはちょっと違うのだった。手作業による粉骨にこだわるとかいうのも、感覚としてはわか
らないではないものの、私にはなんだかじっとりした印象だ。でも、それはいいわ~と思う人だ
っているわけで…。
委託による散骨は、どこも割合低めのプランになっている。散骨する海によって料金が違う業者
もある。東京湾36,000円というのから、船が大きいからかもしれないが7万円台の業者もあっ
た。全部を委託すると料金が一番安いのは、どの業者も同じのようだ。
もちろん料金はかかるが遺族の同行もできるし、故人や遺族の希望は出来るだけ叶えてくれるよ
うだし、遠方からでも対応してもらえるようだ。業者に遠慮なく相談したらいいと思う。ちなみ
に、以下が申し込みフォームにあった、個人情報以外の質問項目と私の答え。
申込人との関係 = 母
第一希望年月日 = 特になし
第二希望年月日 =
分骨の有無 = 全部散骨
分骨容器 = 無し
希望音楽第一希望 = 特になし
希望音楽第二希望 =
音楽好みのジャンル =
希望献花 好みの花 = フリージア
希望献花 好みの色 =
希望献花 嫌いな花 =
希望献酒 = お茶
上記以外希望献酒等 =
申込内容 = 委託散骨格安コース
散骨希望場所その他 = 特になし
参加人数 =
備考 =
それにしても、死体検案書が6万円だったのは、改めて高いと思うなぁ。しかも自治体によっ
て金額が違うのを知って驚きもした。伊豆で想定された金額では、それでも安い方だったなんてね…。
総じて、死に関してはあまりにも、あまりにもお金がかかりすぎるとつくづく実感する。一般的
な宗教的儀式をすべて省いて、直葬が17万くらいだった。これで、僧侶に読経を頼んで戒名つけ
て、墓を建てて仏壇買って維持していくとなったら、いったいあといくらかかるんだろうかと思
うと、考えただけでなんだか腹が立ってくるな…。
母が亡くなる前から思っていたことではあるけど、私ももちろん散骨希望。業者のサイトにあっ
た、利用者から寄せられた感想を読むと、親兄弟を散骨で送った人は、自らも散骨を希望する人
が圧倒的に多いことがとても興味深いのだが、同時にその心情をとても理解できるのだった。
★ Christina Perri - A Thousand Years ★