その人はベンチではなく、　　　　　

疲れた様子で地面に座っていた。　　　　　

木陰のあるベンチがないからだ。　　　　　

冷たい飲み物でも差し出してあげたかった。　　　　　

ベンチが木陰になるように植樹するとか、　　　　　

木陰にベンチを設置するんじゃなく、　　　　　

たぶん、ただベンチがあれば、　　　　　

ただ木が植えてあれば、　　　　　

それで満たしてるという感覚なんだと思う。　　　　　

花を植えるスペースをきちんと整えてあるところもあれば、　　　　　

人や野良猫の侵入を防ぐために、　　　　　

仕方なく不格好な対策をとって、　　　　　

残念なことになっている公園もある。　　　　　

うちの前の公園はそのどちらでもない。　　　　　

花を植えたい住人と、町会とが巧く折り合っていないのだと思う。　　　　　
 

以前、カナダ人の若者が言っていたことを、　　　　　

そのもっともっと昔、ここへ越してきた時に私も思った。　　　　　

「コレハ、コウエンジャナイ」