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2019.02.11
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カテゴリ:短歌…だと思う
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ほんの1、2年くらい前のこと。よくぞこんな思い違いをしていたなぁと気がついたことがある。

       
私はずっと弟は「三つ下」と思っていた。ところが、生まれた年を単純に数えると4つ下だった

       ことに、弟が亡くなって十年以上経って気がついて、なんだかもやっとした。

       なぜそんなことになったのかというと、弟は早生まれで「3学年下」だったものだから、それを

       
「3歳年下」と思い込んでいたのだった。厳密に言うと2カ月程度の違いなので、ぼぼ3つ年下

       でもいいんだけれど、
弟は体の小さい子だったし、その2カ月にさえもなんだか憐憫の情が湧いて

       しまうのは、彼がもうこの世に居ないからなんだろう。


       4つ上の私でさえなす術もなく、頭までかぶった布団の中で震えながら、心が折れるに任せるし

       かなかったあの頃。あの時
私より4歳も小さな心で、弟はどうしたら母を救えるのか考えていた

       だろうし、あの大きな音が止んで、早く恐怖の時間が終わるのを願っただろう。

       そんな夜を何度か耐えて、あの子は私にあんなにやさしかったのに、生きることの波にもまれて

       いると、結局こんなことになるとわかっていたなら、私が先でもよかったのにと苦し紛れに思う

       こともあった。

       けれど、あの子がいなくなってわかるただ一つの確かなことは、私が先じゃなくてよかったとい

       うことかもしれない。11歳の弟に、これほどいつまでも癒えない強い喪失感を抱えさせたまま、

       その後の人生を送ら
せずに済んだのだからと思わなければ、私だってつらすぎる。

       夫に先立たれ、弟を失った悲しみを胸から吐き出してしまえる人が身近にいなかったけれど、残

       念ながら母は、そ
れができる相手ではなかった。母は家を出て私と再会して以来亡くなるまで、

       私の前ではただの一度も弟のことを口にしたことがない。

       不自然なほど口に出さないから逆に何も思っていないはずはなく、母と再会以来初めて話す弟の

       ことが、
あの子が携帯電話を置いたまま帰らない事実だなんて、話せやしない。世の中には知ら

       ない方がいいことだってある。そうでなくとも、もう全てが遅いのだし。

       この取り返しのできない全てのことは、私たちがあの子を見捨てた果てのことなのだから、今と

       なっては母は母、私は私それぞれに悔み、苦しみ続けるしかなかったと思うしかないのだった。

       ただ、もしかしたら母は亡くなるまで、弟の事実を知らなかったわけではないかもしれないと思

       わせる、ち
としたやり取りが、母の遺骨を田舎へ持って行ったときに母の長姉とあったのだ

       が、
今さらそれを確めたところで、太陽が西から昇ることはない。

       今日は、弟の誕生日。生きていればいつかは、私の年齢を追い越したんだろうに。忘れてしまえ

       たらいいと思うこともあるが、こうして繰り返し繰り返し思い出してあげることしか、私にはも

       うできることがなくなってしまった。

       はるか昔の、小さかった弟のもみじのような手や、広い庭のどこを歩いてもわざわざ私の後ろを

       ついてくる
弟の可愛さを思い出しながら。そうして生きて、私は母の年齢を追い越すのだろう。



 





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最終更新日  2022.10.15 19:38:49
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