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「ほら、さくらが咲いているよ」
ちがう、よ。あれは うめの花だ。 すう、と指を伸ばす前に答える。あれは桜の花じゃない。だいいち、今朝のニュースで桜前線はまだ本州の端っこの方にしか届いていなかったじゃないか。うめとさくらの違いも分からないのかいと笑う。その違いは何であるかを明確に説明することなんて出来やしない。確か、梅のほうが桜よりも先に花をつけ、その色は紅梅と白梅があって。いま、先に見えるあの木に咲く花は濃いピンクであるからきっと紅梅なんだろうね。 あれは、うめの、花だ。 繰り返して言い聞かせる。 「さくらに見えるよ」 繰り返してそう言う。 うめ さくら うめ さくら 口の中で繰り返す。 遠くに見える梅の木に花を見つけた。道ばたに立つ裸の木は、桜。あとひと月もしないうちに花をつけるよ。 「ほんとう?」 さあね。桜のことは詳しくない。でも、確か、桜の木にはたくさん毛虫がいるんだっけか。 虫が苦手な人がさくらを見るのは少し危険なことかも知れない。毛虫がうねうねと身体をくねらせて地を這う姿を想像するのは、あまり気持ちの良いものじゃないけれど、きっと来月の今ごろはさくらを見ているんだろう。毛虫を気にしながら、道端に立つ木の下で。 桜前線は中国地方あたりにありながら、東京はいまが満開。花見の予定は、無し。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007.03.29 01:43:59
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