村山由佳『野生の風』
~集英社、1995年~
村山由佳さんによる長編小説です。
染織家・多岐川飛鳥さんは、「わがままで奔放な女」というレッテルのかわりに、作品に高い値が付き、学生時代からのように海外を飛び回り、様々な色彩に触れることができていました。
そして、ベルリンの壁が崩れた夜、彼女はベルリンにいて、写真家・藤代一馬さんに出会います。これまで様々な国で様々な男性と恋愛してきた飛鳥さんですが、一馬さんにとりわけ惹かれます。…が、国内での仕事のため、いったん帰国します。
その後、様々な事情で彼からもらった連絡先も破棄し、再開していなかった飛鳥さんですが、ついに一馬さんがいるアフリカに(再会目的ではなく)わたります。そこで、衝撃を受けるほどの色を見る飛鳥さんですが、個人的な事態も思わぬ方向に動き始めます。
本書の主要な登場人物として、飛鳥さんの高校時代の同級生で、出版社で編集者として働く柴田祥子さん、そして一馬さんの助手のような存在の浩司さんがいます。
読み進めるにつれて、ぶっきらぼうだった浩司さんが好ましく思えてきましたし、実はすごく重要な役割を果たしていますが、上の概要にはうまく入れられませんでした。
また、アフリカで飛鳥さんの最初の案内役をつとめてくれたロレンスさんが素敵すぎます。
物語自体はややつらいですが、アフリカでの動物たちの、ただ生きる姿や、それを写真におさめる一馬さんの姿勢など、印象的なシーンも多く、以前紹介した『天使の卵』同様、こちらもじっくり味わって読めました。
(2022.11.29読了)
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