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2023.04.08
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Michael Goodich, Vita Perfecta: The Ideal of Sainthood in the thirteenth Century, Stuttugart, Hiersemann, 1982

 ​三浦麻美『「聖女」の誕生―テューリンゲンの聖エリーザベトの列聖と崇敬―』(八坂書房、2020年)​や​後藤里菜『〈叫び〉の中世―キリスト教世界における救い・罪・霊性―』(名古屋大学出版会、2021年)​でも参考文献として引かれている、聖性研究の基本的文献です。
 たとえば、付録の表は、1215-1314に生きた518人もの聖人について、いつ頃生まれたか、出身地、没年、回心時の年齢、所属修道会、出身身分など、詳細な情報を提示しており、これだけでも重要です。
 本書の構成は次のとおりです。(拙訳)

―――
まえがき
1.序論―歴史史料としての聖人伝
2.13世紀聖人伝序説―教皇列聖文書
3.13世紀聖人伝序説―非列聖文書
4.聖性と社会構造
5.形成期:子供時代
6.形成期:青年時代
7.敬虔の形態学:修道院の聖人たち
8.敬虔の形態学:托鉢修道士の聖人たち
9.敬虔の形態学:女性の聖人たち
10
.敬虔の形態学:修道院外の俗人の聖人たち

11.結論
12
.付録
13
.一次史料文献目録
14
.二次資料文献目録
15
.略号一覧
16
.索引
―――

 序論は、聖性の分析に重点が置かれていた先行研究に対して、「理想的な文化的類型」としての聖人自身に焦点を当てることを強調したうえで、研究に用いる様々なタイプの史料を概観したのち、本書の構成を示します。本書は大きく4部構成で、第1部(第2章・第3章)は列聖に用いられた史料の概観、第2部(第4章)は当時の聖人の社会的・地理的分析と同時代の社会構造とのかかわりを論じ、第3部(第5章・第6章)は聖人たちが宗教的生活を選択するに至る形成期として子供時代と青年期を扱い、第4部(第7章~第10章)は回心後の聖人たちの経歴を、修道士や托鉢修道士、女性や俗人という類型ごとに分析します。
 第2章は、教皇による列聖手続きの特徴を概観したのち、通史的にその様相を具体的に見ていきます。第3章は、列聖の際に重要だった聖性の証人リストや、修道会として列聖を推したい人物の聖性のデータ収集を行っていたことなど、興味深い事例も紹介します。
 第4章では、聖人たちの社会的出自(貴族、君主、商人、貧者など)を統計的に示す表(地域ごとに3種類を提示)と、聖職者の場合の位階(教皇、修道会創設者、司教など)による分類を示す表が提示されており、有用です。
 第5章は特に興味深かった分析の1つで、聖人たちの幼少期における両親の役割などが論じられています。父親の厳しさや出生時の父親の不在は聖人伝によく見られ、さらには両親の不在などの要素も指摘されます。第6章は聖人の青年期についての分析で、ここでは親との対立が重要な要素として挙げられます。関連する、ベネディクト系修道会では、修道院の役職が家族を模したもの(Fatherなど)であるのに対して、托鉢修道会はそうした家族的構造を拒絶し、権威よりも奉仕を示すministerの称号を用いたという指摘(p.105)が興味深いです。
 第7章から第10章は上に示した構成のとおり、聖人たちをその属する修道会や状況で大きく4区分し、その経歴をたどります。
 本書の特徴として、分析の根拠として518名の聖人のデータベースがあるため、表を多く掲載し、統計的に状況を説明する姿勢が挙げられます。データベースとして有用ですし、説得的に議論を展開しているように思いました。

(2022.12.15読了)

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Last updated  2023.04.08 17:50:47
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 のぽねこ@ corpusさんへ ご丁寧にコメントありがとうございました…

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