乾くるみ『北乃杜高校探偵部』
~講談社ノベルス、2013年~
京都府宇治市の名門校・北乃杜高校の、謎解き仲間5人が挑むいくつかの謎を描く、4編の短編が収録された連作短編集です。
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「《せうえうか》の秘密」校歌、応援歌とは別にさらに用意されている逍遥歌の、歌詞が昔は違っていた。なぜ歌詞が変えられたのか、と疑問を抱いた横井から相談を受けた清水は、自分なりに歌詞への疑問を書き出していく。学校OBの山科の祖父の助言も得るため、1年生の頃に謎解きを一緒にした5人が山科家に集い、逍遥歌の歌詞に隠された秘密に挑む。
「記録された殺人の予告」サッカー部の試合に出場した後、修学旅行に合流することになっていた清水は、合流先に向かう新幹線の中で、修学旅行用学校ブログに不穏なメッセージが寄せられていることに気付き、生徒会長の赤倉に連絡する。それは、修学旅行の最終日に人を殺すと読めるメッセージだった。合流後、探偵部の一人、稲川の友人のケータイ紛失事件が起こっていて、そのケータイから書き込みがなされたことも判明。赤倉たちと連携を取りながら、限られた時間の中で書き込んだ人物の特定を目指す。
「牛に願いを」文化祭では、男子寮代表と女子寮代表の二人が織女牽牛に扮する牛引きのイベントが行われる。大役を担う清水と稲川だが、清水は引継ぎがうまくいっておらず、ぎりぎりまで段取りを把握していなかった。そんな中、OBで有名な漫才師が文化祭で漫才を披露したのち、清水はそのOBからある依頼を受けることになり……。
「贈る言葉」美人教師と評判の先生(高校OG)の、卒アルの写真がチェーンメールで回されてきた。その歯には、巧妙なコラージュなのか、矯正器具が付けられていた。1年生の状況からも事態を重くみた稲川は、清水に相談を持ち掛ける。一方、文芸部の横井は、自殺をほのめかす詩が部室に投稿されていたことを明かす。二つの事件は関係があるのか。また、犯人の手掛かりも全くないなか、赤倉がとった解決策とは……。
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これは面白かったです。大好きな物語です。
清水さん視点の三人称で物語は進みますが、謎解きの妙はもちろん、5人の友情(信頼関係)や恋愛の行方の描き方も素敵です。
もともと涙もろいですが年々拍車がかかるなか、「贈る言葉」にはやられました。
繰り返しですが、大好きな作品のひとつになりました。
作中で言及される過去の事件や後日譚も、もし発表されるならぜひ読みたいです。
素敵な読書体験でした。
(2023.01.06読了)
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