アンデルセン(大畑末吉訳)『完訳アンデルセン童話集2』
~岩波文庫、1984年~
わずか2ページの物語から最長で50頁以上の物語まで、26の童話が収録されています。
すべてについて紹介するのは省略して、まずは収録作品のタイトルを掲げて、印象的だった物語についてメモしておきます。
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「青銅のイノシシ」
「友情のちかい」
「ホメロスの墓のバラ一りん」
「眠りの精のオーレ・ルゲイエ」
「バラの花の精」
「豚飼い王子」
「ソバ」
「天使」
「ナイチンゲール」
「仲よし」
「みにくいアヒルの子」
「モミの木」
「雪の女王」
「ニワトコおばさん」
「かがり針」
「鐘」
「おばあさん」
「妖精の丘」
「赤いくつ」
「高とび選手」
「羊飼いの娘とエントツ掃除人」
「デンマーク人ホルガー」
「マッチ売りの少女」
「城の土手から見た風景画」
「養老院の窓から」
「古い街灯」
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冒頭の「青銅のイノシシ」は、フィレンツェの青銅のイノシシにまたがり、町中の芸術作品を目にした貧しい少年の物語。何かで見たか聞いたかしたことがありますが、好みの話です。
「バラの花の精」は、女性の恋人が悪者に殺されたのを目撃していたバラの精が、かたきうちする物語。「豚飼い王子」は、貧しい王子が皇帝のお姫様と結婚したいと思い、豚飼いとして皇帝のお城で使えながら、お姫様の希望を色々とかなえようとしますが…という物語。前者は勧善懲悪、後者もある意味そうで、どちらも好みでした。
「ナイチンゲール」は、町の人々が世にも珍しい最高の鳥と噂するナイチンゲールを、なんとしてもつかまえたいと思う皇帝の話。さらに欲張ってしまい、大切なものを失いかけた皇帝への、鳥の優しさが印象的です。
「赤いくつ」は、貧しい女の子にくつ屋のおばあさんが赤い古い小布でくつを作ってあげるところから始まります。このことで、赤いくつに執着するようになった女の子のその後を描くのですが、これはちょっと意外な展開で、好みではありませんが印象的でした。
あまりにも有名な「マッチ売りの少女」は、絵本などでクリスマスのことという印象を持っていましたが、ここでは大晦日の出来事として描かれていて、発見でした。
通りでの役目を終えた街灯の思い出や、大切にしてくれた老夫婦に引き取られてからを描く「古い街灯」も好みの物語でした。街灯の光で、恋人からの手紙を読んだ男性のことを思い出すシーンなど、街灯の回想にぐっときました。
岩波文庫の「完訳アンデルセン童話集」は全7冊とのこと。残り5冊は手元にもありませんが、いつしか読めるでしょうか…。
ともあれ、印象的な物語もあり、楽しめた一冊でした。
(2023.04.29)
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