アンデルセン(川崎芳隆訳)『絵のない絵本』
~角川文庫クラシックス、1994年~
月が「わたし」に語る話を書き留めた、という体裁の童話集。インド、ドイツ、パリ、ウプサラ、ポンペイ、ローマなどなど、世界各地で月が見た日常のひとこまが語られます。
童話自体の味わいもありますが、本書でもっとも興味深いのは、童話のあとに収録されている、「さすらいの旅路」と題された訳者によるアンデルセンの伝記です。
ハンス・クリスチャン・アンデルセン(Hans Christian Andersen, 1805.04.02-1875.08.04)は、デンマークのオーデンセという町で、貧しい靴職人の家に生まれました。学校に行きたかったけれど家庭の事情で行けなかった父親は、いろいろと読み聞かせをしてくれたそうです。ハンスは事前学校に通いますがあまり勉強はせず、芝居にあこがれ、徒弟として奉公に出る年齢になったときも、コペンハーゲンに行き、芝居を志します。
コペンハーゲンに行ったあとについてはこの記事に書くのは省略しますが、波乱万丈な人生を送られたようです。しかし、とにかくその行動力のすごさと、出会った人々に恵まれていた方だったんだなぁという印象を受けました(とんでもない校長もいたようですが…)。
詩人、童話作家アンデルセンの経歴を分かりやすくたどれ、もちろん童話本編も味わえる一冊です。
(2023.05.07読了)
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