オールコット(松本恵子訳)『若草物語』
~新潮文庫、1986年~
(Louisa May Alcott, Little Women, 1868)
ルイザ・メイ・オールコット(1832-1888)は、貧しい家庭に四人姉妹の次女として生まれながらも、哲学者の父、優しい母、そして姉妹仲も良く、恵まれて成人されたそうです。本書はオールコットが35歳のときに出版された少女向けの家庭小説で、大成功をおさめ、これにより裕福になり、父の負債を返済するなど、家庭も経済的に安定していったようです。
本書は、オールコットの家庭をモデルにした物語です。
舞台となるマーチ家は、もともと裕福な家庭でしたが、父が不運な友人を助けようとしたことで、財産を失い、貧しい生活を送ることになりました。
長女のメグ(マガレット)は美しく優しく、それでいて裕福な生活が忘れられず、ぜいたくを希望しながらも、家庭教師としてつとめていました。
次女のジョー(ジョセフィン)は、元気いっぱいで気性が荒く、気難しいマーチおばの世話という仕事をする仲でケンカもしつつ、大好きな本を読んだり物語を書いたりしていました。
三女のベス(エリザベス)は、はにかみ屋で学校には行かず、家で勉強をしながら、家事をしていました。のちに、隣人のローレンス家のおじいさんに気に入られ、ローレンス家で素敵なピアノを弾けるようになります。
四女のエミイは、学校に通っていますが、のちにあるトラブルで、ベスといっしょに勉強するようになります。彼女は虚栄心が強いですが、絵画の才能がありました。
…と、こんな四姉妹の父は、南北戦争に参加し不在。母は優しく、4人を導きます。
隣人のローレンス老人は気難しくも、四姉妹を気に入ります。その孫のローリイは、引っ込み思案でありながら、ときどき四姉妹と次第に仲良くなっていきます。
もめたり悩んだり笑ったり…。素敵な四姉妹の日常が描かれます。中でもジョーの元気さで、物語は明るく(ときに辛い状況も訪れますが)、なんとか彼女たちは乗り切っていきます。
印象的なシーンはたくさんあり、ジョーとエミイの大喧嘩、様々な場面で母親が四姉妹に教訓を与えるところ、父親や姉妹の一人の病などなど、日常を描きながらも大きなイベントがあって、楽しく、ときにつらくもなりながら、読み進めました。
松本恵子さんによる訳も素敵です。
あまりに有名な作品でありながら、読むのは今回が初でしたが、良い読書体験でした。
(2023.07.25読了)
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