京極夏彦『今昔百鬼拾遺―月』
~講談社ノベルス、2020年~
記者・中禅寺敦子さんと、学生の呉美由紀さん(『絡新婦の理』で初登場)が活躍する中編(長編?)集です。
3編の作品が収録されています。
それでは、簡単に内容紹介と感想を。
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「鬼」昭和28年9月から「昭和の辻斬り」と命名されることになる事件が続発。美由紀の先輩も、一連の事件の中で命を落とす。彼女は、自分の家系の女性は刀で斬り殺される、だから怖いと語っていたという。一方、刀を持って現場に立っていた男は、どこか犯人ではないような違和感もあり…。
「河童」益田は受けた奇妙な依頼を受ける。盗品の宝石を取り返し、持ち主に返すため贋作宝石を作って欲しいという依頼を受けた職人。しかし、その依頼人や関係者たちが、次々と溺死するという事件が発生した。そしてみな、ズボンが切り裂かれ、お尻が露わになるという奇妙な状況で発見されていて…。
「天狗」美由紀が知り合った篠村美弥子は、自分の友人が高尾山で行方不明になったという。一方、その後別の山で発見された女性の遺体は、その友人の服を身に着けていたという。同時に複数発生した高尾山での「天狗攫い」事件の真相とは…。
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これは面白かったです。
鬼の刀に呪われる因縁の家系、河童にまつわるような品のない様々な事件、天狗の人さらい事件と、バリエーション豊かな物語が収録されています。
特に面白かったのは「河童」でした。多々良先生も登場してはちゃめちゃですし、貴重な証言を聞けた団子屋の女将さんから姪御さんを紹介されたときの益田さんの発言の破壊力たるや。しばらく笑って次の行に進めないくらいでした。
さて、敦子さんの冷静な事件の分析と、美由紀さんの熱い言葉で、事件が収束するというお約束の構造にも安心します。美由紀さん素敵です。
良い読書体験でした。
(2023.01.02読了)
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