テーマ:映画レビュー(894)
カテゴリ:本・映画・音楽
公開中に気になりつつ何年も見る機会を逃していて・・・三部作通して見ましたが、予想以上に面白かった!久々に、脚本、映像、俳優と3拍子揃った作品を見たような気がします。
1(初作)がとてもよくできた話でハリウッドでもリメイクされましたが、2,3は時間軸が交錯する人物描写中心のスピンオフなので、1の世界観がますます深くなるような感じ。 コンセプトの根底にあるのは仏教思想の無限地獄です。1だけ見るとラウが極悪人のように思えるのですが、三部作全て見終わると、メインキャクターの誰もが深い業を背負っているという構図が見えてきます。ただ、その業を生きて背負わなければならないラウが最後まで無間地獄から脱することができないというか。 裏社会ものなのに映像がとてもきれいなのと、女性陣があまり活躍しないせいか男性陣がこれまたびっくりするほど美しく撮られています。 華やかなスターオーラを放つアンディは冷酷な裏の顔をもつエリート警察官にぴったりだし、トニーはあの困ったような笑顔で薄幸オーラ爆発、中年のややくずれた色気全開(劇中では20代後半のはずですけど・・・)。サム、キョン、ウォンとサブキャラも魅力的です。 あと音楽が印象的で、しばらく耳から離れません。 以下、各作品の印象。 1(無間道):ヤンとラウの対照的な生き方、共通する切なさのあぶり出し方が見事。2人は常に、違う立ち位置から「善人になりたい」と切望しているのに、あのラストの救いようのなさといったら。メインは苦悩と葛藤の中にもがき苦しむ2人なんですね。無間地獄なだけに。潜入の危うさによるドキドキ感はこの初作が一番です。 どうでもいいけれど、猫顔のアンディと犬顔のトニーは並ぶと絵になるなあ・・・屋上の対決シーンやら、オーディオショップやら。アビシニアンとコーギーです。 2(無間序曲):自分の生き方と家族の間で葛藤するヤン、苦しい恋に悩むラウ、1ほどの対比はなくて青春ものになっています。ラウはこの時点でもうすでにヤバくなっているような・・・マリー姐さんの最期が悲惨すぎる。2人の若い頃のキャスティングは最初は似てないな~と思っていたのですが、若ヤンのショーン・ユーは澄んだ瞳に常に憂いのある表情、若ラウのエディソン・チャンはハンサムなのにねっとり冥い視線がなんとも・・・で、この2人で間違いない!とまで思えるように。あと、ウォン警視が意外と黒くてますます好きに(笑)。 3(終極無間):時間軸としては、1の前後を描いているので、1を補完する内容で楽しめます。いろんな時間軸がブツ切りでつなげられているのは混乱しますが。 だんだん壊れていくラウを演じるアンディがすごい。いつもの爽やかさを完全封印しています。 ただ、クールなヨンがなぜあそこまでヤンに入れ込む(危ない橋を渡ってまで仇討ちをする)のかがちょっと不明。ヤンの退学で自分が首席になれたからというだけでは弱い。しかもヤンは学生時代のヨンのことを実は思い出せてない気がするのは私だけでしょうか。 作品として一番質が高いのは明らかに1。でも1でハマった人間が楽しめるのは3ではないかと・・・。全体的に救われない物語を本当に美しく作った、という感じです。 バイオレンス系映画の中でもマフィアものとかヤクザものとか好きじゃないんですけど、すでに香港ノワールまつりの予感がひしひしとしています(苦笑)。
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最終更新日
2010.06.07 02:19:14
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