今年日本でもドニー・イェンは確実にキていると思うのですが、とりあえず、この上映館の少なさ。何で…?それに何といっても彼の一番の代表作だと思うんですけど。
それはともかく、まずはドニーが奇跡のアラフィフだと声を大にして言いたい。メイクを差し引いても、何なんでしょうあのトゥルンとした感じ。30代半ばくらいにしか見えない。病院とか映画館とか奥さんとふたりで顏が並ぶシーンは本当に麗しく…ダブルヒロインか!
正直、「イップ・マン」シリーズを見るまではそれほど彼に注目してませんでした。ジェット・リーの方が早く世に出てハリウッドにも進出したので、そちらに目がいっていて。
それまで私の中のドニーの役のイメージは、ストイックな武術家か、根性のある暴力刑事…つまり男臭い感じ。
それが「イップ・マン序章」でさっぱりと清潔なベリーショートにして、萌え袖気味な長袍を優雅に着こなし、少女のようにはにかむ葉師匠を見て、え、ドニー!?と思い。そして「継承」では御年53歳(撮影当時は51歳?)の彼がまた萌え袖ではにかむのを見て、よくわかんないけど要するに彼自身が奇跡のような存在なんだと思いました。
それがあの華麗なアクションと相まって、強くてカワイイ(?)葉問というキャラクターを完成させているわけです。俳優としては新境地を開き、アクションスターとしては円熟味を増した今の彼にまさにはまり役だと思います。
ストーリーは、てっきりブルース・リーとの師弟愛かと思っていたので夫婦愛というのは良くも悪くも肩透かしでした。女子としては楽しみましたけど。どちらかというと得意の武術で人助けするというこれまでの展開から、彼も家族を愛する普通の男だったという面を強調するような話になっています。
とはいえ、アクションにつながる線は必要なので、マイク・タイソンやマックス・チャンとの対決シーンに向けたあれこれがあるわけですが、夫婦の話に時間を割きすぎて、伏線だとか(夫婦以外の)人物の心の機微だとか細かいところが描き切れていないというか。そこはちょっと消化不良です。でも夫婦とアクションを絡めたエレベーターのシーンはいい。
ドニーは役柄に合わせてアクションのスタイルを変えることで有名ですが、葉問のアクションは素人目に見ても確かに美しいですね。決してワイルドなカンフーではなく、古典的だけど無駄がない感じ。寡黙で柔和な葉問のキャラにとても合っています。
シリーズを通してよくできていると思うのはやり2作目「葉問」かな。ホン師匠との対決や魚市場のシークエンスも最高。「序章」は悪くないんだけど、日本人としてはちょっと切ないんだよなあ…
4作目の噂もあるようですから、楽しみに待つとしましょう。