友人の猫を預かることになった。昔飼っていたことがあるので、気軽に引き受けたのだが。
「四匹もかよ」
「言ってなかったっけ?」
「聞いてねーよ」
「ま、ひと晩だけだから、頼むわ」
「頼むわってなぁ……」
俺に向かって手を合わせるこの友人、なんと今晩、彼女を部屋に呼ぶために、猫をみてくれというのである。ヒトデナシと言ってやりたいところだが、彼女が猫アレルギーで、猫を飼い始めたのは付き合い始めるよりも前だったというのだから仕方がない。
それに、いざ猫を前にすると、俺の気持ちもあっさり動いた。自分で考えていたよりも、俺は猫好きだったらしい。飼うのはとても無理だが、ひと晩愛でていられると思うと胸が躍った。猫アレルギーの彼女に感謝したいくらいだ。
「萌えって、こいつらのためにあるような言葉だな」
四匹を抱えてそう言うと、友人にはとても嫌な顔をされたが。
猫の毛色はそれぞれ、白、黒、トラ、三毛だった。ついでに名前もそのまんま。いずれも野良出身ということだが、人懐こくて可愛らしい。猫同士ケンカもしないし、トイレの躾もばっちりで、困るようなことはなかった。
部屋を一通り点検し、こたつの中で仲良く身を寄せ合う猫たちを見て、俺はあることを思いついた。せっかくこんなに猫がいるのだから、今話題のネコ鍋をしてみたい。四匹いれば、特盛ができる。
しかし、この案には問題があった。ネコ鍋は、箱などに入りたがる猫の習性を利用して土鍋を置き、猫がそれに入り込んで眠るのを見て楽しむというものだが、うちには土鍋なんて高価な代物はない。ダメ元で隣人に尋ねてみたが、やはり持っていないとのことだった。それどころか、こんなことを言う。
「どっかで鍋借りれたら呼んで。俺も猫食ってみたい」
絶対呼ぶか。
他の友人にもあたってみたが、ほとんど持っている者はなく、持っていたとしても、用途を話すと断られた。食べ物を入れる中に、猫なんか入れるなというのだ。みんなロマンがなさすぎる。
まぁ、今夜は猫にまみれて眠れるのだから、それで我慢するか。
そう自分を宥めて、ガッカリしつつもワクワクしながら夜を待った。今日は暖かく眠れそうだ。
つづく
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ぼっつぇさんのリク用に書いてたやつのお蔵出し。
どうやら二年以上も前に書いていたもののようです。
やっぱり前回のやつって、文体が変わってるような気がします……。