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カテゴリ:バイク(ツーリングからちょい走りまで)
そのスズキの黄色いバイクは、その日のツーリングの同行者だった。
妙義山を北から上り、一番上のパーキングの横を通り過ぎて南面を下りて行き、また上ってパーキングで休憩した。 その県道196号を走るのは、私が覚えている限り4回目だが、もしかしたらもう1回くらいは来ているかもしれない。 1回は濡れた路面だったような気がするが、比較的天気に恵まれていた記憶がある。 が、その日は前日の雨のために、路面はところどころでウェットだった。 スズキのTL1000Rはその日の水先案内人だったが、最初の上りで旦那の操るスポーツスターが抜いて行き、私もそれに追随した。 ウェットだからか、案内人であること責任においてペースを守ったのか、旦那と私の後ろを付いてくるバイクはいなかった。 さくらの里の入口で一旦後続を待ち、再出発。TL1000Rに前を譲り、南面の下り。 途中まで下ってからUターン。そして上り。微妙な速度。車に追い着き、だらだらと後方を走ってからパーキングへ。そして休憩。 だから。行けると思った。TL1000Rより前に。 休憩後、TL1000Rを頭に走り出したとたん、スポーツスターがすぐさま前に出た。 次の長いストレート。 行く! アクセルを開ける。 抜いた! まだ行ける。もっとだ。 何故かそう思えた。 もっとだ。 そして……ここで減速! けれど、思いに反し、FJの重い車体は対向車線へと飛び出した。 対向車線の端には段差のある歩道があった。 そこにぶつかったら跳ね上げてすっ飛ぶだろう。 止まれ! そして曲がれ! 減速しきったと思った時、向きが変わっていた。 前後のタイヤが左右にバラバラによじれている感覚。 転ぶかも? そう思いながら、元の車線を睨む。もう次のコーナーに届こうとしていた。 そこにはキャッツアイが。その大きさなら踏んだところで問題ない。 後方は? TL1000Rがいるはずだが、彼は紳士だ。邪魔はすまい。 そう判断しつつ、キャッツアイの合間へとタイヤを滑り込ませた。 なんたる失態。 対向車が来ていたらアウトだった。 そう考えるそばから、アクセルを開ける。頭の中は妙に冷め、今のことを怖いとは微塵にも感じなかった。 一瞬、怖いと感じていない自分に怖さを感じた。 その考えも後方に去り、スポーツスターを追った。ところどころウェット。けれどあまり気にならなかった。 ミラーに写るTL1000Rが、時々離れていることに満足した。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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