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カテゴリ:おはなし
森のなかに 子ぎつねの学校がありました。
先生ぎつねが みんなに 唐突に言いました。 「修学旅行というものに行ってみようじゃないか」 きつねたちは、ざわめきました。 しろぎつねは「なにしに行くの?」と聞きます。 むりもありません。この学校では 修学旅行に行くという習慣もなかったし、遠い森の きつねか たぬきの学校でそういうものがあるということを 小耳にはさんで かすかに知っていただけだからです。 先生は「修学旅行に行くと 見聞を広めることができ みんなの将来の役にたちます。」と話しました。 きいろぎつねが聞きます。「どこへ行くんですか」 くろぎつねも聞きます。「修学旅行ってお金がかかるとききました。おうちは貧乏だから、行けないんじゃないかと・・・。どれくらい費用がかかるのですか」 先生は「いまの君たちのような若い時分に 見聞を広めることは とても大事なことなのです」ときっぱり 言いました。 しろぎつねが食いさがります。「なにしに行くのかじぶんには わからないけど 見聞を広めるためなら どこへ行くのかを事前に調べて 決めたほうがいいのではないでしょうか」 先生は「みんなの多くは この森とその周辺しか行ったことがないでしょう。もっと広い世界を知ってほしいのです」と言いました。 あかぎつねが訊ねます。「うちのおばあちゃんから 遠くへ行くとあぶないよといつも言い聞かされています。あぶない目にあわずにすむのでしょうか」 先生は「きみたちのように感受性がゆたかなうちに 修学旅行へ行くことに意味があるのです」と言います。 ちゃいろぎつねが聞きました。「となりの森にしんせきが住んでいるのですが、その森はぶっそうなのだそうです。そこをとおって行くのですか」 先生は「日ごろ経験していないこと それを体験するのが修学旅行なのです」とせきをしながら言いました。きいろぎつねが発言しました。「修学旅行がそんなにすばらしいのなら どこへ行くのか決めたほうがいいと思います」。 先生は「どこへ行くかは修学旅行の前日に発表します。旅行の日程もいまは いえません。先生にまかせてください。では 満月の翌日を楽しみにしていてください」と締めくくって帰りました。 きつねたちはおおさわぎです。「どこ行くのかなぁ」「あぶなくないのかなぁ」「となりの森はとおらないかなぁ」「お金あるかなぁ」「なにしに行くのかなぁ」ガヤガヤガヤガヤ・・・・・。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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