地球哲学とはほど遠い日常

あかちゃんがむずがるのをお母さんは
「どうしたの？　まだおなかすいているの？」と聞きながらあやしている。
「ほら、ぬいぐるみよ、持てるかなぁ」と言って、あかちゃんの胸にそっとおく。

それは車内の光景。実際は、列車は暴走している。


「お～い、水割りもう一杯くれよぉ～。こうも負けてちゃ、気合いをいれなくちゃな」とつぶやく中年の男性。
「トウク、そんなに飲んで大丈夫かよ。つぶれちまうぞ。」とシュウがたしなめる。
「あにさん、なに言ってんだよ。おりゃ、これくらいの酒で泥酔なんてしないよ。もう一杯くれよ！」
「あ、トウク、ジョーカーで一気に上がっちまったぜ。こりゃ、痛てぇよ。」とクナカが頭をかかえている。
「へえ、たまには運がまわってくるのか・・」とからかいながら、シュウがグラスをぽんとトウクに手渡した。

これは車内の光景。実際は、列車は暴走している。


中学生の修学旅行。子どもたちは、お互いにデジカメを撮って、鼻や耳や目だけアップした映像を眺めながら笑っている。子どもたちの声があまり大きくなると、教師が「こら～！　うるさいぞ！　ほかにもお客さんもいるんだぞ！」と一喝する。

これは車内の光景。実際は、列車は暴走している。


食堂車で、若い男女が紅茶を飲んでいる。
「久しぶりね。列車で旅行するのって」
「そうだね～　何年ぶりだろう。それに、ここのオムライス、おいしかったね。」
「そうね。わたしなんか、作れそうにないなぁ・・・」
「ぼくも作れそうにないよ・・・。到着時刻は、何時だったっけ」
「明日の４時ごろじゃなかったかなぁ」
「ええっと、切符、、これだけど、書いてないんだよね。気が利かないってこのことだよね」

これは車内の光景。実際は、列車は暴走している。