『ノモンハンの夏』読了
『ノモンハンの夏』(半藤一利著 文春文庫)を読了した。村上春樹著『ねじまき鳥クロニクル』にも、ノモンハン事件のことが出ていて、気になっていた。(生きたまま皮を剥がれるシーンが何ともショッキングで、いつまでも頭に残っている)ふ~ん、ノモンハン事件って、こういうことだったのか、とやっと腑に落ちた感じ。司馬遼太郎氏は、きれいごとしか書かないから、というのがあって、これは半藤氏の言葉だったか、他の人の言葉の引用だったか…。しかし、まったくその通りで、ヒーローになれる人が誰もいないんだよな、あの昭和初期というのは。『坂の上の雲』では秋山兄弟とか爽やかな(爽やかだったような?)ヒーローがいた。ところが昭和に入ると、そういうヒーローになりうる人物がいない。あの時代活躍していたのは、近隣国から避難を受けているように侵略者達だ。よく言われるのは軍部の独走。天皇は戦争の拡大に一貫して反対していた。この『ノモンハンの夏』でも、その辺のことがよく描かれていた。当時の戦争をリードした参謀辻政信を「絶対悪」と著者は断罪していた。自分の保身と栄達しか考えないで、自分の作戦の失敗についてひとかけらの反省もない、こういう人がいるんだ。たぶん、今も。(と考えた方がいいかもしれない。二度と騙されないために)今年、『日本のいちばん長い日』(原作:半藤一利)という映画が公開されたが、あの時代、唯一ヒーローになれるのは、昭和天皇だけかな、と思ったりした。